2013年4月18日

シーリングワックスの思い出

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10年以上前のことですが、ドイツで行われていたステーショナリーの展示会に会社が出展していたことがあって、ぼくも出展者として2度だけ参加した経験があります。シャンパンが注がれたグラスを手にしながら商談をしているブースがあり、ちょっとした驚きを感じながら、ヨーロッパは優雅だなあと思いました。

そのなかでもっとも衝撃的だったのは、私たちのブースの隣にあったイタリアの会社でした。そこは、ガラスペンや羽根ペン、ボトルに入ったインク、シーリングワックスなどが棚にぎっしりと並んでいて、まるでイタリアの街中のお土産屋に入ったような雰囲気。さらに奥には大きな大きなパルメザンチーズや生ハムが塊の状態で置いてあるカウンターが設置されていました。

朝、展示会場に行き仕事の準備をしていると、ひげをはやした大柄の社長が、こっちに来いと呼びかけてきて、グラッパというお酒を小さなカップに入れて手渡します。すると、それはひとくち飲んだだけでかっと熱くなるような度の強いお酒。思わず驚いた顔を見せると、社長は大きな声で笑って、さらに飲めと言う。それは5日間の期間中、毎朝の恒例行事となりました。
 
彼らはブースに、お酒の他にもエスプレッソマシーンも持ち込んでいて、手が空いた時には、よくそのブースに行きコーヒーを飲みました。最初は苦いなあと思っていたエスプレッソも何日かすると美味しく感じられるようになり、同時にスタッフとも仲良くなって、日を重ねるごとに居心地がよくなってきました。

男はとにかく明るくフレンドリーで、お酒が大好き。女性は優しく穏やかで、ぼくがお酒が弱いことを知ると、お酒を勧める男たちをよそにこっそりコーヒーといれてくれました。また、遊んでいるように見えても、仕事はきちんと行っていて、自分たちの商品に誇りと自信を持って商談をしているのが分かりました。そこでの時間は、まだ行ったことがないイタリアの印象を強烈にぼくの記憶のなかに植え付け、すっかりイタリア好きになってしまいました。展示会の最終日、お土産だと言ってぼくのイニシャルの文字のシーリングワックスのスタンプと蝋をプレゼントしてくれました。
 
4月20日(土)、トラベラーズファクトリーのでチャルカさん秘蔵のヴィンテージシーリングスタンプを使ってカード作りを体験できるイベントがあるということで、久しぶりにそのときにもらったスタンプと蝋をひっぱり出して、押してみました。

蝋を溶かしてカードの上にたらして、そっとスタンプを押し付けると、形が浮き出てくる。何回かトライをした後ですが、良い感じでできました。熱くてやわらかい蝋、ぎゅっとスタンプをあてることで膨らむ蝋の端。そして、スタンプをはずすとクリアに浮き上がる印面の文字。ひとつとして同じものがない端の形。まさにアナログならではの面白さです。ご都合が付く方はぜひ一度体験してみてください。

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