2014年11月25日

歳をとったら素敵じゃないか?

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閉店後のトラベラーズファクトリー。商品の陳列などのちょっとした仕事を終え、2階に行きTRUCKの大きなソファに座わる。少しひんやりした革の手触りと、包み込むような優しい座り心地に身を任せながら、流れる音楽に耳を傾ける。
 
BGMは、80歳を迎えたレナード・コーエンの新しいアルバム。呟くような渋い歌声と、音数少なく控えめに鳴らされているピアノやオルガンが中心の無国籍な演奏が夜のファクトリーに馴染む。そして、僕らはコーヒーを飲みながら、次の旅の計画について話をしたりする。すると、透明感のあるアコースティックギターによるアルペジオとともに、儚い天使のような歌声が聴こえてくる。BGMは、ヴァシュティ・バニアンの「Heatleap」に変わる。
 
ヴァシュティ・バニアンは、1970年にアルバムを1枚リリースした後、たいした評価もされずにシーンから姿を消しますが、若いアーティスト達による再評価とともに音楽活動を再開。2005年に35年ぶりとなる2ndアルバムを発表します。そして、今年、自ら最後のアルバムと公言する「Heatleap」をリリース。ほとんどの演奏と録音を自ら行ったというそのアルバムは、丁寧に時間をかけて編み上げられた手編みのセーターのような温かさに満ち溢れています。
 
トラベラーズファクトリーがオープンして3年。TRUCKのソファも少し味がでてきました。ファクトリーができる前、自分たちが作った空間で、TRUCKのソファに座り、トラベラーズブレンドを飲んで、旅について話をするなんて夢のようなことでした。
 
トラベラーズノートが出来たことで、なんとなく分かったのは、自分たちのできることを自分たちのペースで丁寧に誠実にやっていけば、少しずつやりたかったことが実現するということ。時代に合わせるなんておこがましいことは考えず、今を生きる自分たちもまたこの時代の一部なんだと考え、その直感を信じる。先のことなんて分からないけど、これからもそれを僕ら自身が楽しむことができれば、きっと未来は明るいような気がします。
 
レナード・コーエンやヴァシュティ・バニアンは、時代に迎合するのではなく、長い年月を生きてきたからこそできる彼ららしいやり方で、今の音を鳴らしています。そんなかっこいい年寄りに憧れます。そういえば、大阪にあるTRUCKのお店で見た同じ形のソファは、ぼろぼろでつぎはぎだらけなんだけど、それが美しくてかっこよかったなあ。
 
「歳をとったら素敵じゃないか?」
 
ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンはそんなことを言ってました。ぼくもけっこう本気でそう思っています。