ハロー、ワールド
少年時代、ぼくにとっての世界は自転車でたどり着ける距離の中にあった。本やテレビは、その外に違う世界があることを教えてくれたけど、その頃のぼくには、ニューヨークの摩天楼やアフリカの砂漠も、銀河鉄道の旅や魔法使いが住む村みたいに空想の世界のようだった。実感が伴わない情報は、空想とたいして変わらないような気がした。
成長するにつれて、旅をすることでぼくの世界は少しずつ広がった。その土地を訪ねて、空気の匂いや熱を感じ、何かと触れ合うことで空想の世界が現実の世界になった。息を呑むような美しい風景に出会うために、美味しいコーヒーを飲むために、お気に入りの音楽を聴きたくて、大好きな人に会うために、旅を重ねていった。
はじめて尋ねる友人の家へ行くように、ドアをノックしてあたらしい世界と出会う。きっとぼくらの世界はそんな風にして少しずつ広くなっていくような気がする。
戦略よりも自分たちの直感を大切にしよう。データよりも出会った人の声に耳を傾けよう。世界は映像のなかにあるのではなく、かつて訪れた友人が住む場所やその友人の友人が住む場所で、無限の広がりがある。世界は狭いようで、限りなく広く深い。まだまだ知らないことばかりで、旅を重ねて少しずつ知っていることが増えていく。
ハロー、ワールド。こんにちは、世界。そんな風に、あたらしい世界と出会いたい。