いよいよ発売を迎えた3月25日。この日のトラベラーズファクトリーは、たくさんの愛に溢れた奇跡のような特別な場所になった。スタッフみんなで開店準備をしているトラベラーズファクトリーに着くと、最後の仕上げに窓に10周年のロゴを描いた。描いていると、まだオープン前なのに少しずつお客様が集まってきて、ぼくは緊張しながら慌てながら仕上げた。描き終えると外に出て、ちょっといびつな10周年ロゴを写真に撮って、空を見上げた。少し肌寒いけど、青空が覗いている。雨じゃなくてよかったなあ。
　
いつもより少し早めにお店を開けると、たちまち狭い店内はたくさんのお客様で溢れた。レジや入り口でお待たせしたり、ご不便をおかけしてしまうこともあったのに、みなさんいやな顔もせず、逆に笑顔であたたかい言葉をぼくらにかけてくれる。
　
2階に上がると、10周年記念展で並んでいるかつての限定アイテムを懐かしそうに眺めたり、プロフェッショナルユーザーたちのノートを目を輝かせて眺めたり。そして、皆さん、この日にあわせて作った10周年記念のスタンプを押す。買ったばかりのキャメルから、何年も使い込んで革に味がたっぷりあるものまで、たくさんのトラベラーズノートを見せていただいた。
　
久しぶりに会う方、いつも来てくれる方、海外から来てくれた方、みんなトラベラーズノートの新しい仲間を心待ちにしてくれて、それをこの日にこの場所で手に入れたいと、平日なのに忙しいなか時間を作って来てくれたんだなあ。ほんとうにありがとうございます。
　
トラベラーズファクトリーがまだできる前は、ぼくらが作ったあたらしいプロダクトが発売されても、何がいくつ売れたとか数字で
その結果を知るだけだった。それはそれで大切なことだとは思うけど、この日にこの場所に溢れていた、たくさんの人たちの熱気と笑顔に立ち会いたくて、この場所を作ったんだ。売上数とかマーケティング調査では絶対に分からないリアルな実感こそが、ぼくらが信じる指針だし、さらに、この場所に来ることができなかったもっと多くの方々の存在を想像することができる。
　
トラベラーズノートが生まれて10年。こんなにもたくさんの方々に愛されるノートになり、ほんとうにトラベラーズノートは幸せな
ノートだなあと、ぼくらはちょっと嫉妬するくらいに実感することができました。トラベラーズノートは、窓に描いた10周年のロゴみたいに、ちょっといびつで不完全ですが、そんなところが人間っぽくて、味があって温かいやつです。これからもよろしくお願いします。