2016年4月 4日

新しい旅のはじまり

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4月になるのにあわせて、トラベラーズファクトリーにほど近い目黒川の桜も満開になった。だけど満開の休日は、寒くて外に出る気分にならず、ぼくは、最近リリースされたばかりのジェフ・バックリーのアルバムを聴いて家でのんびり過ごす。もうずいぶん前に亡くなってしまった彼がデビュー前に録音していたカバー曲を集めたアルバムなんだけど、ボブ・ディランからスライ&ファミリーストーンにツェッペリン、スミスなど、アクが強くて難しそうな歌を、彼の歌として聴かせてしまう、とても素晴らしいアルバム。ぼくにとってこのアルバムのハイライトは、やっぱりスミスの2曲。
 
「The boy with the thorn in his side」
(心に茨を持つ少年)
「I know it's over」
(もう終わってしまったのは分かっている)
 
タイトルだけですでに切ないこの2曲をジェフ・バックリーが、痛々しいほどに美しい奇跡の声で歌う。アコースティックギターの弾き語りがゆえに、ジョニー・マーをはじめとしたバンドのメンバーを従えて歌うモリッシーの歌声よりも、さらに切なく感じて、ぼくは思わずスミスを聴いていた1980年代半ばの高校生だった頃の切ない記憶を思い出してしまう。恥ずかしくてここに書くことなんてできないようなことなかりだけど、それでもなんとかやってきたし、あの頃の不安に満ちた感覚が今の自分の原点となっているような気もする。
 
4月になり会社には不安な表情で新入社員がやってきた。高校を卒業しなんとか大学に滑り込むことができた息子は髪を栗色に染めた。高校に進む娘は、あいからず思春期まっさかり。そしてぼくは、小さいトラベラーズノートに書き込んだコトバをお守りのように身につけて、11年目の旅に出る。
 
まあいろいろ不安なことはあるけど、真剣に何かに向かい全力で取り組めば、なんとかなる。新しい旅がはじまる人へのメッセージとしてはあまりにも平凡だけど、10年の旅を終えて、けっこうまじめにそう思っている。

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