トラベラーズノートの刻印のこと
僕らがものづくりをする上で大切にしていることのひとつに、永く使うほどに愛着がわいたり、美しく変化するものであってほしいということがある。例えばパソコンなどのデジタル機器は、永く使うほど相対的な価値は下がり、使いにくくなってしまうものだけど、それとは逆に、使うほどに味がでたり手や体になじんでくることもアナログの良さだと思う。
そんな想いで作っているから、お客様から、使い込まれて味がたっぷり出たトラベラーズノートを見せていただくと、やっぱり嬉しくなってしまう。 そんな時、つい見てしまうのが裏の刻印。トラベラーズノートが発売された2006年3月、裏の刻印は、MADE IN THAILANDとあわせてMIDORI CO., LTDと表記されていた。その後、2007年7月に、社名がミドリからデザインフィルに変わり、ミドリは社名ではなくブランド名という位置付けになるのにあわせて刻印から株式会社をあらわすCO., LTDを取り、MIDORIのみの表記になった。なので、MIDORI CO., LTDという刻印は、発売後1年と少しだけ出回ったものにしか押されていない貴重なものなのです。
トラベラーズノートの刻印を見せていただき最初の刻印が押してあるのを見つけると、つい嬉しくなってこの話をしてしまいます。みなさまも裏の刻印を見返してみてください。
今度あたらしく発売するキャメルは、MIDORIという表記がなくなり、代わりにTRAVELER'S COMPANY, JAPANという刻印に変わります。また今後は、黒や茶も切り替えていく予定です。昨年末より、MIDORIブランドから独立して、TRAVELER'S COMPANYとしてやっていくことになったのがその理由ですが、刻印が変わることは、CO., LTDがなくなったのと同じように作り手の事情であり、それによってものの価値や品質が変わることを意味する訳ではありません。
でも、例にあげるのもおこがましいけど、ZIPPOやリーバイスみたいに、ロゴの表記の移り変わりが、そのプロダクトの歴史をさりげなく伝えてくれるようなものになったらいいなと思ったりもします。
5周年記念のキャメルと、使いはじめてまもない新しいキャメルを並べてみると、裏のちょっと誇らしげな5周年記念の刻印と5年の歴史によってすっかりツヤツヤになった革の味わいでまったく違ったものに見えるけど、それがトラベラーズノートの面白いところだと思う。そのレギュラーサイズのキャメルと同時に、10周年記念のミニキャメルを使い始めたんだけど、こっちの方は早くも味が出始めている。考え事をしている時とか、手持ち無沙汰の時についつい手元に置いて触ったり、撫でたりしちゃうんだなあ。