2017年3月21日

Stand By TRAVELER'S notebook

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昨年の12月、アメリカ西海岸のサンフランシスコからLAまでを車で移動の際、オリーブエディションが似合う風景がないかと、探していた。ウェブで紹介する時に使う写真が欲しいと思っていたのだ。ハイウェイを何度か降りてみたけど、それほど時間に余裕がなかったので、あまり遠くに行くことができず、最初に予定していた深い森での撮影は諦めざるを得ないことに気づいた。
 
そんな中、突然海が見えてきて、海岸線の美しさに惹かれて車を止めた。車を降りてしばらく歩いてみると、緑が生える切り立つような崖のワイルドな海岸が見付かった。さらにその海岸には単線の線路が続き、崖の崖の間には錆びついた鉄橋が通っていた。僕らは、最初に思い描いていたイメージとは違うけどオリーブエディションにぴったりの風景だと思った。早速、みんなで線路にノートを置いたり、鉄橋の上を緊張しながら歩いたりして、写真を撮った。
 
鉄橋の上に立つと、映画『スタンド・バイ・ミー』を思い出した。頭の中でベン・E・キングのテーマソングが鳴り、少年たちが線路を歩いていく、あのシーンが頭に浮かんだ。汽車に轢かれそうになりながら鉄橋を渡って森に入り、沼でヒルにかまれたり、野宿をしたりしながらの、死体探しの冒険の旅。将来への不安や家族や先生への不信、コンプレックスとプライドが入り混じる思春期特有の不安定な精神状態、それゆえに深い結びつきが生まれている仲間たちとの旅。
 
映画のような風景でトラベラーズノートを撮影していると、映画が、大人になり小説家となった主人公による少年時代の回想で始まるように、かつての旅の記憶が蘇ってくるような気がした。そして、僕らがいる今現在もまた、あの頃からずっと続く旅の途中なのだと思った。少年時代の友情、秘密基地、初めてのナイフ、家出願望、森の中での野宿、少年時代に誰もがきっと心に持っていた冒険の旅への憧れ。そんなイメージが頭に浮かび、甘酸っぱくて切ない懐かしさと同時に、新しい旅をはじめる勇気がわいてくるような気がした。
 
さて、いよいよあと少しでトラベラーズノートのオリーブエディションやブラス万年筆などが発売。毎年のことながら、この瞬間には、新しい仲間たちが皆さんにどんな風に受け止めてもらえるのか、緊張感とワクワクがまざった複雑な気持ちになる。
 
2006年に発売して以来トラベラーズノートやその仲間たちは、毎年3月に新しいプロダクトをリリースするというのを繰り返している。規則正しく年中行事のように、10年間生真面目にそれを繰り返してきた。最初にトラベラーズノートが発売された2006年。発売直後に、銀座の伊東屋さんに行って、きれいに作っていただいていた売り場を眺めながら、やっぱり嬉しさと緊張がまざった複雑な気持ちになっていた。
 
あれから11年が経つけど、いつまでたっても、この気分はあまり変わらない。むしろ、今はトラベラーズファクトリーがあり、さらにみんなの投稿やインスタグラムなどで、世界中の方々のその反応を聞いたり、見たりできるから、嬉しさも緊張感もより大きくなっているような気もする。
 
新しい仲間たちが、皆様にとってワクワクするものであり、新しい旅をはじめる勇気を与えてくれるものであることを願っています。それでは、よい旅を!
 
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