名入れ職人栗山さん
トラベラーズノートのオーダー名入れでいつもお世話になっている栗山さんに、トラベラーズファクトリーに来ていただき、名入れ実演のイベントを行った。
栗山さんの名入れは、活版印刷のように活字を組み合わせ、昔ながらの手押しの箔押し機で名入れをしている。レーザー名入れより、手間や技術が必要だけど、しっかりと深く文字が刻印され、独特の味があるのが特徴。栗山さんは、この名入れの仕事を35年以上に渡って続けている。
普段は申し込みから3週間くらいかかる名入れがイベントではその日に持ち帰ることができて、さらに栗山さんが活字の文字を組むところから名入れをするまでを間近で見ることができる。自分で考えて組み合わせた文字やマークが、綺麗に押されたトラベラーズノートを手にすると、皆さん笑顔で「大事に使います」と言ってくれて、その場にいる僕らも幸せな気持ちになった。イベントの2日間では、そんな笑顔をたくさん見ることができた。
実は、栗山さんには、70歳を過ぎて仕事をセーブしている中で無理を言ってお願いして、今回のイベントが実現することができた。イベント後の打ち上げでは栗山さんからも楽しかったという声を聞くことができて、僕らもいいイベントになって嬉しかった。
栗山さんは、多彩な趣味人でもあり、独学で絵を描いたりしている。鉛筆で仏像や人物が細密に描かれたその絵は、素人離れした素晴らしいもので、イベント期間中は、それらの絵をお借りして会場に並べさせてもらった。 仕事に誇りと自信を持ちながらも決して尊大にならず、年齢が離れた僕たちとも気さくに話をしてくれるし、お客様に喜んでもらいたいという気持ちに溢れている。だけど、自分がやりたいと思う仕事しかやらない。自分のペースを守りながらも、引き受けた仕事は期待以上にやり遂げる。
70歳を過ぎても、仕事をしながら絵を描くことから、ランニングをしたり、俳句を書いたり、好きなことに没頭する時間を持っている。独学で学んだという絵は、とても素晴らしいのに、美大を出ているハシモトに、基礎を教えて欲しいと言って、謙遜しながら学びたいという気持ちを伝えてくれる。
最近、仕事の合間に公園に行って、子供向けの遊具で運動をしているんだと、iPhoneで撮った動画を見せてくれた。
「けっこう難しいんだよ。この歳になったらジムなんていかなくても、公園で十分なんだ」と言いながら公園のアスレチックに本気で挑んでいる姿を見ると、失礼だけどなんだか少年のようで素敵だなと思った。栗山さんは散歩が好きで、東京中の街や公園を歩き回っている。トラベラーズノートの画用紙リフィルをプレゼントしたら、これで散歩の途中にスケッチしてみると言ってくれた。
イベント中は、たくさんの女性が手土産を持って会いにきて、栗山さんと楽しそうに話していた。70歳過ぎてもモテモテだ。明るくてお話し好きで、人懐っこく茶目っ気もあり、おしゃれでダンディー、女性もお酒も大好き。仕事も趣味も人付き合いもマイペース。長い人生経験を経て、お金をかけなくても自分で楽しみを作り出す方法をたくさん知っている。僕はもうすぐ49歳を迎えるけど、歳をとったら、あんな風になりたいな。
栗山さんが心をこめて名入れをしてくれるトラベラーズノートのオーダー名入れは、トラベラーズファクトリー オンラインショップをはじめ、中目黒やステーション店頭でも随時受け付けてします。ぜひ。