TRAVELER'S VILLAGE
トラベラーズの仲間の一人が、休みをとって直島を旅をしていると、メールを送ってくれた。瀬戸内海に朝日が昇る写真に、美術館やホテルが素晴らしいと伝えるそのメールを読んでいると、自分まだ行ったことがないこの島を旅したくなった。近年、アートの島となることで、多くの人たちが足を運ぶという直島のことを調べてみたら、トラベラーズの島があったらどんなだろうと、想像してみたくなった。
場所はどこか南の小さな島。海が綺麗で気候が温暖なところがいいな。その島の一角にトラベラーズヴィレッジがある。その中心には工房トラベラーズファクトリーがあり、タイから届いた革を使ってトラベラーズノートを作るのをはじめ、様々なプロダクトが作られている。年代物の活版印刷機や払い下げのミシンなど新しい機械はないけれど、それゆえに大量生産とは違う人の手の温もりが感じられるモノが作られている。
小さな工房がその周りにいくつかあり、寄木職人や鉄工職人、カバン職人などがそこでものづくりをしている。もちろん、それらは作り手と話をしながら購入することもできる。トラベラーズファクトリーの中には、カスタマイズルームというスペースがある。ここでは、たくさんの種類のスタンプをはじめ、名入れ刻印やシルクプリント、ペイント、断裁、製本などの機械に、ビーズやリング、チャームなどのパーツ、さらにそれらを加工する道具が揃っていて、訪れた人たちは、ノートをはじめ旅の道具のカスタマイズをすることができる。
小さな灯台がある海岸沿いには、かつて小学校の分校だった建物をリノベーションして作られた宿泊施設、トラベラーズホテルがある。わずか5部屋の小さなホテルだけど、教室を改造して作られた部屋は、ゆったりした広さで長い年月の間丁寧に磨かれ続けたことで美しく黒光りする木の床に、味のある革のソファやオーク材のしっかりしたテーブルなどが置かれたインテリアは、上質なのに懐かしい心地よさを感じる。トラベラーズらしい遊び心のあるアメニティに真空管アンプを使ったオーディオセットが各部屋にあるのもいい。
食事は、近くにあるトラベラーズレストランで新鮮な素材を使って丁寧に作られた素朴だけど上質な料理がいただける。ホテルの裏には小さな農園トラベラーズファームがあるので、野菜はそこで採れたものを使う。朝は、ホテル内にあるトラベラーズカフェで焼きたてのトラベラーズブレッドに焙煎したてのコーヒーが美味しい。
安く泊まりたければ、その隣にドミトリータイプのトラベラーズゲストハウスやトラベラーズキャンプサイトもある。キャンプ場では、定期的にキャンプファイヤーが焚かれていて、旅人だけでなく地元の人もそこでコーヒーやお酒を飲みながら、語らいのんびりと火を眺めている。
雨の日だったら、トラベラーズライブラリーでゆっくり本を読むのもおすすめ。トラベラーズがセレクトした本に加え、ここを訪れた旅人たちが持ち込んだり、寄贈された本で成り立つライブラリーでレコードのコレクションも充実している。本やレコードは、宿泊者は自由に部屋に持ち込み読んだり、聴いたりすることができる。
トラベラーズライブラリーでは小さいながらも本やリトルプレスの出版も行なっていて、トラベラーズタイムズやトラベラーズプレスなどの発行とあわせて、ゆかりのある作家やユーザー出身のエッセイストなどの本も出版している。
ライブラリーに加え、ぜひ訪れたいのが、トラベラーズミュージアムだ。ここでは、旅をテーマにしたアート作品にトラベラーズにゆかりのある画家やアーティストの作品が並ぶアートコーナー、トラベラーズカンパニーが今までリリースしたプロダクトのアーカイブをはじめ、仲間たちによるものや影響を受けたプロダクトが並ぶプロダクトコーナー、そして、トラベラーズノートユーザーによるノートの紙面やカスタマイズされたノート、さらに写真やテキストなどが並ぶユーザーズギャラリーの3つのコーナーがある。ユーザーズギャラリーでは、今は人気のアーティストになっている方のアマチュア時代のノートもあったりして楽しい。また、ミュージアムには、イベントスペースがあり、ノートバイキングやワークショップ、ライブ、映画上映などのイベントが不定期で開催されている。
トラベラーズヴィレッジが最も賑わうのは、やはり夏に2日間にかけて開催されるトラベラーズサマーフェスティバルだ。いつもは静かな広場に、ステージが組まれ、ミュージックフェスティバルが開催される。さらに、イベントにあわせてフードコーナーやショッピングコーナーも充実する。この日にあわせて、ノートバイキングやコーヒー教室、ユーザーイベントなどのさまざなイベントが開催される。この時は、ホテルやゲストハウスはいっぱいで、ビーチや森に設置されたたくさんのハンモックで夜を過ごす人も多い。
また夏には、トラベラーズスクールという学校がオープンする。ここでは、子供達のサマーキャンプのような学校や就職を控えた学生、長期休暇を得ることができた大人たちが作ることや表現することなどを体験しながら学ぶことができるらしい。そして、冬のある時期、トラベラーズヴィレッジは2ヶ月間閉鎖される。この間すべてのスタッフは、自由に旅をしたり、何かを勉強したりすることができる……。
妄想は果てしなく広がっていくけど、やりすぎて大規模になってしまうのも違うし、長くなったのでこの辺で終わりにするけど、まあでもこんな場所があったら僕も働きたいな。