2018年10月30日

7th Anniversary of TRAVELER'S FACTORY

20181030b.jpg
 
朝、中目黒の駅に着き、ホームから改札に向かって歩いていると、改札の外にいた感じのよい女性が僕に笑顔を向けてきた。さらに嬉しそうに手を上げて、僕がここに来るのを待っていたかのようなしぐさをした。「誰だっけ」空港にある飛行機の案内板がパタパタと回るように、頭の中の記憶を探ってみるけどやっぱり分からない。
 
あいまいな表情をしながら進んでいくと、彼女の視線がこちらとずれていくのと同時に、笑顔を向けているのは、自分ではなく後ろを歩いている誰かだということに気づいた。「そりゃそうだよな、そもそも待ち合わせなんてしてないし」そんなわずかは3秒ほどの出来事で、朝から小さなハートブレイクのような気分を味わいながらも僕は平静を装い、後ろを振り返ることなく前へ進んだ。
 
この日は、トラベラーズファクトリー7周年記念のイベントだ。美味しいカレーとコーヒーにワクワクしながら足を早めた。トラベラーズファクトリーに着くと、鉄作家の成田理俊さんに作ってもらった看板が目についた。オープン当初は鉄が黒い皮膜に覆われていたけれど、今ではところどころに赤いサビが見えている。それが、7年間の時間の経過を美しさとともに感じさせてくれる。成田さんに作ってもらってよかったなあと7年たってしみじみと思った。
 
成田さんの作品から感じる鉄の美しさもそうだし、他にもコーヒーに紅茶、バッグやシャツ、お菓子、写真、イラスト、本、音楽など、トラベラーズファクトリーができてから、それらを生業とする方々と一緒に仕事をしたり、イベントを開催しながら、いろいろなことを学んだ。例えばコーヒーだったらもっと美味しく淹れる方法からはじまり、コーヒー豆や焼き方による味の違い、自分好みのコーヒーはどんな種類なのか、それまでぼんやりとしか分からなかったことが、何度も庄野さんが淹れてくれるコーヒーを飲みながらお話を聞くことで、昔よりもだいぶ分かってきたような気がする。
 
今回もライブを開催してくれた山田稔明さんやtico moonさんからは、今まで知らなかった素晴らしい音楽体験を教えてもらったし、ピワンさんが作ってくれたトラベラーズカレーはそれぞれ趣向をこらしたトッピング10種類から選んでカスタマイズするという、今まで味わったことがない新しいカレー体験だった。そうやって、もともと好きだったコーヒー、音楽、カレーがもっと好きになっていく。
 
それによって、暮らしの幅が広がり、未知の世界を教えてもらってくれたけど、みんなから教えてもらった最も大切なことは、それぞれの仕事に対する向かい方だ。自分たちの信念や美学に忠実であること、義理人情を重んじて仲間を大切に思うこと、自分たちの仕事に共感し、暮らしを支えてくれるお客様に敬意を払い、大切に思うこと。そして仕事を面白がること。当たり前でもしかしたらきれいごとのようなことかもしれないけれど、それを本気で信じて仕事に向かい合う仲間がいるのが、なによりも嬉しい。そして、僕らとその仲間たちが作り出すものに共感し、楽しみにしてくださる方がいることが僕らの生きがいだ。
 
週末のイベントは、素晴らしいコーヒーとカレーに音楽で、まさにそれを存分に感じることができた。8年目に歩を進めたトラベラーズファクトリーをよろしくお願いします。
 
話は変わりますが、今週末は同じ思いを持つ仲間だと勝手に思っているオズマガジン統括編集長の古川さんがプロデューサーをつとめるイベント、「OZの女子旅EXPO」にトラベラーズファクトリーが参加します。こちらもぜひ!

20181030c.jpg
 
20181030d.jpg
 
20181031e.jpg
 
20181030g.jpg
 
20181029a.jpg