2019年3月25日

インフルエンザとものづくり

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風邪はめったにひかない方なんだけど、生まれて初めてインフルエンザに罹ってしまった。
 
先週このブログにブラスクリップの工場を巡ったことを書いたけど、まさにその日。みんなと別れて電車に乗っているとだんだん調子が悪くなってきて、家に着いて熱をはかったら39度。その日はそのまま布団に入り翌日病院へ行った。
 
はじめて行った家の近くの病院は、びっくりするぐらい混んでいて、診察を受けるまで他の人にうつらないように丸椅子がぽつんと置いある薄暗くて誰もいない階段の踊り場で1時間以上待たなくてはならなかった。やっと看護婦さんがやってくると、その場で鼻の穴にこよりのような紙を入れて検査した。それからまた1時間待たされて、椅子に座っているのも苦しくなってきて、地べたに座り、椅子に顔をうつ伏せにしていうんうん唸っていたら、やっとお医者さんがやってきて、「インフルエンザA型ですね」と言って処方箋をくれた。インフルエンザだったということよりも、とにかくやっと家に帰れることにほっとした。
 
途中のコンビニでポカリスエットを買って家に帰り、熱をはかると40度を超えていた。テレビではずっとピエール瀧の逮捕の話題が続いていたけど、熱で頭がぼーっとしていてなんの感情も浮かんでこなかった。この日はなにも食べる気にもならず、結局ポカリスエットと薬しか口に入れなかった。
 
翌日は少しは楽になったけれどまだ熱はあって具合も良くない。1日中寝て過ごす。その次の日には熱も下がり体も楽になった。1日中、カズオ・イシグロの小説を読んでのんびり過ごした。そして久しぶりに仕事のメールをチェックしていくつか返事を送った。そして、その翌日は本の続きを読んだり、絵を描いたりして過ごした。
 
一足はやく使わせてもらっている水彩紙は、やっぱり絵具ののりもよくて、いい感じだ。見開きいっぱいに描いてみた。完成したらブラスクリップで壁に留めて写真を撮った。休みの後半は熱も下がって体力も回復してきたから、おだやかな休日を過ごさせてもらった。
 
インフルエンザに罹ってしまったけれど不幸中の幸いだったのが、熱が出た日に訪れた工場の方々にうつらなかったことで、僕が仕事を休んでいる間にも、無事それぞれの作業が止まることもなく生産が進んでいった。そして今週の出荷を前に、なんとか予定の数量が納品された。
 
ものづくりは基本的にトラブルの連続だ。ひとつのアイデアから設計やデザインを経て試作を繰り返し最終形が決まり、生産ラインができあがって実際にものができあがるまでは、予想外の事態や、解決が難しいトラブルが何度も巻き起こってくる。
 
船の底に穴が空き、そこから入りこんでくる水を必死で外に掻き出しながら、ずぶ濡になって穴を塞ぐためにトンカチを叩く。やっとふさがったと思ったら、今度は強い風に煽られて折れそうになったマストをみんなで支えて補強する。すると今度は別の場所から水が漏れてまた外に掻き出していく......。特にあたらしいものを作る時は、まるで荒波の中を航海しているような気分になることもある。
 
それらに臨機応変かつ柔軟に向かいあいながら、時にはスケジュールや価格、仕様やデザインを修正したりすることもある。そのときに大事なのはほんとうに自分たちが作りたいものの本質を見失わないこと、そしてそれをお金を払って手に入れて使ってくれる人たちのことを深く想像することだ。
 
新商品の発売を間近に控えた今、あたらしい商品を積んだトラベラーズシップは、やっと水平線の向こう側にぼんやりと港が見える場所までたどり着いたところか。永く厳しく、でもそれなりに楽しかった航海もあと少し。港に着いた時に、皆さんが温かく受け入れてくれるといいな。
 
トラベラーズファクトリー各店でも3月28日より発売しますのでよろしくお願いします。

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