2020年3月30日

家で心の旅を

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新しいブラスペンが発売された最初の週末、中目黒、東京駅、成田空港のすべてのトラベラーズファクトリーすべての実店舗が揃って休みになった。発売に至るまでの数々の苦労を思うと、なんともやりきれない気持ちになるけれど、こればっかりはしょうがないですね。
 
1周年を迎え、トラベラーズとの新しいコラボレーションアイテムを発売したばかりの中目黒のスターバックスリザーブロースタリーは、人が集まることを避けるため、目黒川の桜のシーズンにあわせて先週から1週間の休業している。あの場所が最も輝き、魅力が増す時に、それ故に休業するというのはきっと重く辛い選択だったんだろうな。
 
久しぶりにアメリカのLAで暮らす仲間と電話で話をしたら、LAはもっと深刻なようで、食糧の買い出しや通院以外の外出ができない中、外からは救急車のサイレン音が頻繁に聞こえ、ウィルスの脅威が身近に迫っているの実感するとのこと。
 
うちの会社でも在宅勤務が基本となり、本社オフィスが閑散とするなかで、ほんとうに予定通りオープンできるのか、仮にオープンできたとしてもお客さんが来てくれるのか不安を抱えながら、僕らはトラベラーズファクトリー京都のオープンに向けた準備を忙しく進めている。だけど今は、不安を抱えながらも、やるべき仕事があって、そこに向き合えるのはありがたいことかもしれないな。こんな時だからと言って手を抜いたものを作ることなんかできないし、逆にこんな時だからこそ、みんなの心が躍るような場所にしたいと思う。
 
そんな中、会社の経理&IT担当のW氏が大きな袋を抱えてオフィスにやってきた。音楽マニアでもある彼に、「トラベラーズファクトリー京都に飾りたいから、いらないレコードがあれば持ってきてよ」と言っていたのだ。
 
重みで破れかけていた手提げ袋からレコードを取り出し、まず目に入ったのは、僕も大好きなソフトロックの超名盤、ミレミアムのビギン。同じくソフトロックの名盤と名高いソルト・ウォーター・タフィーもある。さらにロバート・ジョンソン、チャーリー・パットンなどのブルースに、ソウル・R&B、フォーク、サイケなど、名前も知らないミュージシャンのアルバムもたくさんあった。
 
「これは貴重盤ですよ」と嬉々としながら一枚一枚説明してくれる彼の話を聞きながら、いらないレコードなんかではなく、彼なりにトラベラーズファクトリー京都に飾るのにふさわしいと思うレコードを厳選して持ってきてくれたことが分かった。
 
外出自粛要請の東京の日曜日は、満開の桜に雪が降るという珍しい1日。僕は家にこもって、W氏が選んでくれたアルバムを聴いて過ごした。この日、多くの人が旅に出ることはもちろん、外に出て誰かと会うこともできずに、家で過ごしていたんだろうな。
 
そんな日はこれからも多くなるのかもしれない。家にいて、ネットやテレビを見ていると、不安を煽られ、心がざわついていくから、本を読んだり、音楽を聴いたり、映画を見たりする方がいい。こんな時だからこそ、本棚の奥にしまってある昔読んだ本を読み返してみたり、古いレコードを聴いてみるのもいい。そしてノートに向かう。旅の思い出を振り返ってノートに記すように、心に残ったフレーズを書き留めたり、ジャケットを絵に描いてみたりすると不思議に心が落ち着いてくる。
 
本や音楽、映画は、僕らを心の旅へと誘う。どこかへ移動するような旅はできなくても、想像の中で旅をすることはできる。こんな時だからこそ、旅するように毎日を過ごしたい。トラベラーズノートに向かいながら、そんなことを思った。
 
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