2021年3月29日

いろいろ落ち着いたら...

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先々週のこと。「メトロミニッツ」主催のイベントがあるということで、みんなで青山のスパイラルまで足を運んだ。「メトロミニッツ」は、東京メトロ駅構内で配布しているフリーマガジンで、オズマガジン前編集長の古川さんが今年から編集長をしている。

トラベラーズノートの初めてのイベントを開催した僕らにとっても思い出深い場所でもあるスパイラルのイベントスペースに入ると、全国のフリーペーパーとあわせて各地から集めたお菓子やコーヒーが並び、なかなか旅をすることができないこの時期にひとときの旅気分を味わえる素敵なイベントだった。編集長の古川さんもちょうど会場にいて、久しぶりにお話をすることができた。
 
お互いの近況報告からはじまり、「メトロミニッツ」やこのイベントのことなど、古川さんらしいものづくりへの想いやこだわり、仕事に対する姿勢に共感しながら話ができた。久しぶりに近い価値観で前向きな話ができることに僕らも嬉しくなって話も盛り上がってきたけれど、イベント中ということもあって、そうそう長話をすることもできず、「いろいろ落ち着いたらゆっくり飲みましょう」と、普段であれば社交辞令のように聞こえかねない言葉を言って別れた。
 
だけど、オンライン上で目にする意見や考えにもやもやした違和感を感じることが多い昨今、社交辞令どころか、共感できる価値観を持つ仲間とリアルに向かいあって、お酒を飲みながら真面目なこともくだらないことも織り交ぜて、だらだらと話をすることを僕は切実に求めている。
 
トラベラーズノートの立ち上げから一緒に仕事をしてきた石井さんが家の事情で、実家のある福知山と東京を行き来することになり、4月から働き方を変えることになった。これからも一緒に仕事はしていくのだけど、先週末にひとつの節目として、みんなでカードにメッセージを書き、それをトラベラーズノートにセットして石井さんに贈った。
 
石井さんは流山工場とオフィスを行き来しながら、トラベラーズのものづくりを根底から支え続け、同時にアアルトコーヒーをはじめ、Ko'da Style、ベンリーズ&ジョブ、トーキョーバイクなど、好きを起点に、たくさんのものづくりの仲間とトラベラーズを繋げ、その世界を広げてきた存在だ。さらにノートバイキングを発案しリング職人として、たくさんの世界中の方々のノートを作ってきた。誰からも愛される、純粋でまっすぐなその人柄は僕らを奮い立たせて勇気を与えてくれたし、トラベラーズのピンチを何度も救ってくれた。
 
会社の同僚という関係を超えて、同じ想いを共有し、同じ夢を追う仲間として、仕事とプライベートの境を超えて一緒に旅をし、お酒を飲みながら熱い気持ちで語り合った。身を削るような想いで一緒に何度も困難を突破し、時には唇を噛み締めるような悔しさを味わったし、心が震えるような喜びも涙がでるほどの感動も何度も一緒に味わってきた。石井さんがいなければ、今のトラベラーズはなかったし、僕自身も辛い状況を何度助けられたか分からない。
 
ビートルズもローリングストーンズも、あのメンバーが同じ時代に同じ場所で出会えたことが奇跡のように言われるけど、僕にとって、たまたま同じ会社で石井さんと出会い、仲間としてトラベラーズの仕事を15年間に渡り一緒にできたことが奇跡であり、かけがえのない財産だと思っている。
 
みんなの想いが詰まったトラベラーズノートは、石井さんに対し、きっと僕と同じ思いを抱いているはずの橋本が、石井さんが好きなものをモチーフにデザインした完全オリジナルバージョンだ。多少ペースダウンすることにはなるだろうけど、これからも一緒に仕事をしていくので、このノートにこれからの新しい計画を綴っていってほしいな。
 
こんなご時世だから、このスペシャルなノートを渡す際も、みんなで集まることができなかったし、数人でビール一杯だけで乾杯してお開きになった。

「いろいろ落ち着いたらゆっくり飲みましょう」僕はまた、社交辞令のような言葉を社交辞令ではなく切実な想いで言った。
 
あの頃、たぶん飛沫もいっぱい飛ばしならみんなで熱くなって語り合ったように、早くまたお酒を飲みながらゆっくり新しい旅の話をしたいな。
 
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