2021年4月 5日

プレイリスト

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B-Sides & Raritiesの発売とあわせて、性懲りも無くSpotifyとYouTubeのプレイリストを作ってトラベラーズファクトリーサイトアップしている。>>>最初、TRC USAからの提案で作ることになったプレイリストは、今ではB-Sidesを含めて3つある。

これらのプレイリストが、トラベラーズノートを使ってくれている方々にどれだけ求められているのか、そもそも喜んでもらえているのかという点については、正直に言えばまったく自信も手ごたえもない。
 
だけど、音楽好きの僕にとっては、チャチャっと適当に作れるようなものではないので、それなりに時間をかけて、同時に思い入れも込めて、うんうんと頭を悩ませながら曲をセレクトし、全体の流れを考えて曲順を決めている。
 
例えば、受験生が受験にはほとんど関係がない科目をなんとなく好きだからという理由で、つい一生懸命勉強してしまうという感じだろうか。受験に影響する科目をちゃんと勉強した上で、ということならまだいいんだろうけど、それはそれで気が進まずはかどらない。「受験」を「売上」とか「効果」に置き換えると、確かにやっていることは同じかもしれない。

B-Sides & Raritiesの発売日、トラベラーズファクトリーに向かう途中、店を出たばかりのお客様とすれ違った際に声をかけていただいた。素敵に使ってくれているトラベラーズノートを見せてもらいながらお話をしていると、「プレイリストも聴いていますよ」と言ってくれた。その時は、照れくさくてポーカーフェイスを装っていたけれど、聴いてくれている人もいるんだと分かって、かなり嬉しかった。
 
個人的な思い入れがたっぷりの大好きな曲が並んでいるから、プレイリストを聴いてくれるだけで、やっぱり嬉しい。自分が本当に好きなものを好きだと発信し、それに対して誰かから共感を得られる、それだけで、何か心が通じ合えた気がするし、人生の喜びっていうのは、そこに尽きるとさえ思ったりもする。
 
良いものか悪いものかを判断する際に、評判とか人の意見だけを頼りにしていると、本質的な良さはいつまでも理解できない。だけど、本気で好きな何かを見つけると、それがコンパスのように進むべき道筋を示し、磁石のように新たな出会いを引き寄せてくれる。僕にとってトラベラーズノートも音楽もそういう存在だった。

今回のプレイリストは、B-Sides & Raritiesをテーマにしている。COFFEE TABLE TRIPやLOVE AND TRIPのプレイリストを作る時もそうだったけれど、テーマを設けることで、新たな発見や思い付きがあるのも楽しい。今回のB-Sides & Raritiesで選んだ曲についてちょっとした解説を書いてみた。40曲分あるのでかなり長いですが、興味のある方だけでも読んでいただけたら嬉しいです。
 
1.We're (Gonna) Rock Around The Clock
Bill Haley & His Comets

「Thirteen Women」のB面、1954年リリース。
映画のサントラとして使われたことでヒット。ロックンロールの元祖とも言われる曲のひとつがB面から生まれているのがロックっぽくていいな。
 
2. Revolution / The Beatles
「ヘイ・ジュード」のB面、1968年にリリース。ポップで耳触りのいいA面(もちろん名曲だけど)の裏に、激しいギターとともに始まる革命を煽る曲。これぞB面といった曲ですね。
 
3. Ev'rybody's Gonna Be Happy / The Kinks
「Who'll Be In the Next In Line」のB面、1965年にリリース。やっぱりキンクスは外せない。

4.Be-Bop-A-Lula / Gene Vincent&His Blue Caps
「ウーマン・ラヴ」のB面、1956年リリース。ジョン・レノンのバージョンで知った曲。
 
5. Woodland Rock / T-Rex
「Hot Love」のB面、1971年リリース。典型的なロックンロールナンバーなのに、逆回転ギターやコーラス、ストリングスなどT-Rexとしか言えない音になっているのがいい。
 
6. Gloria / Them
「Baby, Please Don't Go」B面、1964年リリース。パンクの女王、パティスミスによるカバーも有名。

7. Suffragette City / David Bowie
「Starman」のB面、1972年にリリース。この曲が収録のアルバム『ジギースターダスト』は全部A面級の名盤のアルバム。

8. Winterlong / Pixies
「Dig for Fire」のB面、1990年リリース。ニール・ヤングの名曲のカバー。さえない奴がステージに立った途端に輝きを放つこともロックの美しさであればボーカルのブラック・フランシスはその典型。

9. I'll Feel a Whole Lot Better / The Byrds
「All I Really Want to Do」B面として1965年リリース。初期のバーズの魅力のひとつ、疾走感のあるギターが気持ちいいロックナンバー。

10. Where Angels Play / Stone Roses
「I Wanna Be Adored」のB面、1989年リリース。曲の最後、このままフェイドアウトして終わるのかと思っていると、いきなり素晴らしいギターソロが始まるんだけど、いつもこの瞬間涙が出そうになる。

11. God Only Knows / Beach Boys
「Wouldn't It Be Nice」のB面、1966年リリース。ポール・マッカートニーに今まで聴いた中で最高の曲と言わしめた曲がB面ですよ。A面も個人的にも大好きな曲だし贅沢なカップリングです。

12. Femme Fatale / Velvet Underground & Nico
「Sunday Morning」のB面、1966年リリース。同曲収録のアルバムはシール台紙リフィルの表紙のモチーフ。

13. Unwind / Sonic Youth
シングルB面曲ではないけど、耐洗紙リフィルの表紙のモチーフになった『Washing Machine』収録。『ジギースターダスト』が全曲A面級アルバムなら、これは全曲B面曲のような実験的なアルバム。

14. Your Song / Elton John
「Take Me to the Pilot」B面、1970年リリース。「Take Me to the Pilot」と比べると圧倒的にキャッチなこの曲をなんでB面にしようと思ったんだろう。映画「ロケットマン」で描かれているこの曲が生まれるエピソードも素敵です。

15. Sweet Memories / 松田聖子
「ガラスの林檎」のB面、1983年リリース。アイドルにはまったりした経験はないんだけどこの曲や「赤いスイートピー」、「夏の扉」とかがふと流れてくると今でも思わず胸がきゅんとなる(近所の銭湯では80年代歌謡曲がよく流れる)。
 
16. Maggie May / Rod Stewart
「Reason to Believe」のB面、1971年リリース。ロッド・スチュワート、ソロでの初ヒットはB面曲。

17. Born Slippy .NUXX / Underworld
1995年にインストバージョンのB面としてリリース。その後、映画「トレインスポッティング」のサントラで使用されヒット。僕も映画でこの曲を知ったんだけど、この映画は音楽も含めて衝撃的だった。

18. Move on Up / The Jam
ジャムの最後のシングル「ビート・サレンダー」(超名曲)のB面として1982年リリース。カーティス・メイフィールドの名曲をカバー。いやーこれもかっこいい。

19. Sorrow16 / Manic Street Preachers
「モータウン・ジャンク」B面、1991年リリース。このシングルを出した頃、バンドは最高のデビューアルバムをリリースし、1位をとって解散すると公言。本気かよ、と疑う記者を前に、ナイフで自分の腕にRealと切り込みを入れた。デビューアルバムは結局1位になれなくて解散もせず、ムーブメントとは距離をおいた良質なバンドとして今も活動を続けている。音はもちろん、そんなところも全部大好きなバンド。ちなみに腕に切り込みを入れたメンバーは、サードアルバムリリース後失踪し、今も行方不明。

20. 1977 / The Clash
クラッシュの記念すべきデビューシングル、「白い暴動」のB面として1977年リリース。今はYouTubeなどで簡単に聴くことができるけど、まだネットもなかった時代には、幻の曲だった。そんな貴重な曲をダビング重ねたカセットテープでやっと聴いたりすのももけっこう楽しかったと思う。

21. No Feeling / Sex Pistols
「God Save the Queen」B面、1977年リリース。リフィルジャバラはこの曲が収録されたアルバムジャケットがモチーフ。パンクをリアルタイムで体験できなかったけど、このアルバムを手にして聴いた瞬間が自分にとってのリアルなパンクとの出会いだった。

22. How Soon Is Now? / The Smiths
「William, It Was Really Nothing」のB面。1984年リリース。4年前イベントでLAに行った際、スミスのボーカリストだったモリッシーのライブに立ち会うことができた。この曲が流れた瞬間は最高に盛り上がり、会場の集まった人はみんな僕と同じ様に、思春期の頃からこの歌に魅了され続け、救われてきたのだと思った。それだけでみんな仲間のような気がしたし、この場所がLAだと思うとなおさら嬉しかった。

23. Do It Clean / Echo & the Bunnymen
「The Puppet」のB面、1980年リリース。エコバニはスミスとほぼ同時代に活躍したバンドだけど、ボーカリストが美形というのが大きな違いでそれゆえに女性ファンも多かった。僕がエコバニをちゃんと聴くきっかけになったのも学生時代に付き合っていた女の子が大ファンで全アルバムを録音したカセットテープをもらったからだった。

24. The Killing Moon / Pavement
「Major Leagues」のB面、1999年リリース。そのエコバニの一番のヒット曲のカバー。この頃のペイブメントは、本当に聴いているとどんより暗くなるんだけど、好きで当時よく聴いてたなあ。

25. These Days / Joy Division
「Love Will Tear Us Apart」B面、1980年リリース。きっとスミスもエコバニもペイブメントも影響を受けている1976年デビューのポストパンクバンド。このシングルリリース直後、ボーカルのイアン・カーティスが自殺して解散。その後残されたメンバーでニューオーダーが結成される。

26. Show Me The Way / Dinosaur Jr
「Little Fury Things」のB面、1987年リリース。Spotifyにはこの曲がなかったのでKeep The Gloveを。グランジと言われたバンドではこのダイナソーが一番好きだった。ギターとボーカル担当のJみたいにギターが弾けたらいいのになと思った。

27. Be True / Bruce Springsteen
「Fade Away」のB面、1980年リリース。A面の曲が収録されている「River」も名盤で、今でも定期的に聴くアルバムのひとつ。

28. Beneath / Ride
「Today Forever」B面に収録。1991年リリース。ライドは僕が学生の時にデビューしたバンドなんだけど、メンバーが自分達より年下で、もう完全にやられたって感じの衝撃を受けた。何を張り合ってたのか分からないけど、そんな気分になったはじめてのバンドだった。

29. Halo / The Cure
「Friday, I'm in Love」のB面、1992年リリース。B面がどうのというよりも、単に個人的に好きで世代的な偏りたっぷりのバンドの曲が続くけど、やっぱり10代から20代前半ごろに出会って聴いた音楽は今でも大好きだなあ。

30. Green Onions / Booker T. & the M.G.'s
「Behave Yourself」のB面、1962年リリース。ブッカー・T によるオンガンで有名な名曲だけど、実は中学時代に友人から回ってきたエッチなビデオのBGMにこの曲が使われていて、それがこの曲との出会いでもあった。聴くと今でも複雑な想いになる。

31. Harder They Come / Jimmy Crif
「Many Rivers to Cross」B面、1972年リリース。ストーンズのキース・リチャーズがカバーしていることからこの曲を知って、それでこの曲が収録されている、同名の映画のサントラアルバムを買ったら、これが、レゲエの名曲がつまったアルバムで、レゲエとの出会いのきっかけになった。

32. Hey Love / Steive Wonder
「Travelin' Man」のB面、1966年リリース。ステーヴィー・ワンダーって昔はあんまり好きじゃなかったんだけど、歳をとるにつれて聴くようになった。そういうのってありますよね。

33. She's Always in My Hair / Price
「Paisley Park」のB面、1985年リリース。高校生の頃、渋谷陽一がプリンスは良いって言うから、よく分からないまま聴いていた。でもそうやって聴き続けることでその良さに気づくこともありますよね。かっこいい。

34. Fools Gold / Stone Roses
「What The World Is Waiting For」のB面、1989年リリース。デビューアルバムから数年、待ち望んで聴いたシングルだった。成功パターンを繰り返すなんてしないとバンドが言っていたように、それまでと違う曲調に最初は戸惑ったけど、聴くほどに好きになった曲。そんな姿勢もかっこよかったな。

35. 空がまた暗くなる / RCサクセション
「スローバラード RE-MIX VERSION」のB面。1991年リリース。RCのラストアルバムに収録。「大人だろ、勇気を出せよ」今でもこの曲を心でつぶやくように歌って奮い立たせることもある。

36. Mercedes Benz / Janis Joplin
「Cry Baby」のB面、1971年リリース。ジャニスの死の直後にリリースされたラストアルバム『パール』収録。デモのようなラフなアカペラだけどその分、彼女の悲痛な声が胸に響く。

37. How Can You Be Sure / Radio Head
「Fake Plastic Trees」のB面、1995年リリース。常に実験性と進化を失わないロックの良心みたいなバンド。これは初期の名曲。

38. If / Pink Floyd
1970年リリースのアルバム「原子心母」B面1曲目。ジャケットはリフィルメッセージカードのモチーフ。このアルバムはこの曲ではじまるB面が好き。

39. Ruby Tuesday / Rolling Stones
「Let's Spend the Night Together」のB面、1967年リリース。まだストーンズが来日する前、1988年のミック・ジャガーの東京ドームでのライブに行ったのだけど、この曲が流れてくると数列前にいたおじさんが感極まって、バックネットに登り、しばらくして降りると警備員に連れていかれたのを覚えている。あの頃僕は10代だったけど、今はあの時のおじさんよりも歳をとっているんだろうな。

40. Please, Please, Please, Let Me Get
What I Want / The Smiths

「William, It Was Really Nothing」のB面。1984年リリース。「モリッシーの書く詩は全部悲しいの。全部だよ」スミスが好きだと言うエースホテルのマギーさんからそう聞いて、ほとんどの曲がそうだと思っていたけど、全部だとは思っていなかったので、ちょっと切なくなった。僕が欲しいものを与えてくださいと、Pleaseを3回も繰り返しながら訴えるこの曲もやっぱり悲しい。

今回は長いのでリフィルに絵を描くのをお休みしようと思ったのだけど、田中邦衛氏の訃報があったので、絵を描いてみた。『北の国から』もここで紹介した音楽と同じように大好きで僕の価値観を作ってきた作品です。

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