2021年7月12日

tokyobike.tokyo

20210712b.jpg
 
自分の好みみたいなものは、歳をとってもそうそう変わらないものなんだと思う。
 
小学生の頃、オートバイ雑誌を毎月購入していた。特に新車のレビューが楽しみで、乗れもしないくせに手に入れるのであればどれがいいかとけっこう真剣に悩みながらチェックしていた。当時、オートバイ業界は活況を呈していて、毎月のように新車が登場し紙面を賑わせていた。技術的な進歩のスピードも早かった時でもあり、レース仕様と遜色のない高性能エンジンを搭載したレーサーレプリカモデルと呼ばれるオートバイが人気があった。
 
舗装道路に適したオンロードモデルは流線型の風防がついた前傾姿勢のモデルが中心となり、未舗装の道も走れるオフロードモデルもレース仕様を模した車高が高く、ガソリンタンクも小さいのものが主流だった。またオンもオフもレース用のバイクのように、カラーリングやロゴが派手なものが多かった。憧れを抱くオートバイのイメージは、レースでスピードを出して突っ走るというより、北海道やアメリカの草原や砂漠地帯をのんびり走って旅をすることだった当時の僕は、このレーサーレプリカが好きになれなかった。普段走るのは舗装路が多いだろうけど、たまにはオフロードも走ってみたいから、どちらかを追求したものより、バランス良くどちらもそこそこ走れればいいと思っていたし、派手なデザインも好みじゃなかった。
 
そんな中、ホンダのシルクロードというオートバイが新製品として雑誌に掲載された時に、これだと思った。オンもオフも快適に走れるデュアルパーパスモデルとして開発され、スピードを追求することより、オートバイで雄大な自然をゆったりとツーリングするというコンセプトにまず惹かれた。さらに丸ライトに剥き出しの空冷単気筒エンジン、シンプルなカラーリングなど、余計な装飾を排した無骨でオートバイらしいデザインも魅力だったし、シルクロードというネーミングも、憧れのバイクの旅をイメージさせてくれて、これこそ理想なオートバイだと思った。
 
もちろん買うことも乗ることもできないから、頭の中でこのバイクで旅をするのを想像した。だけど、他のオートバイ好きの友達からは、あまり共感を得ることができなかった。その後、シルクロードは後継モデルが出ることもなくわずか3年で製造停止になってしまった。
 
あれから30年以上の年月が過ぎ、はじめてトーキョーバイクを見た時に、まさに自分にとっての理想的な自転車だと思った。シンプルで自転車らしいデザイン、スピードよりも快適な乗り心地を追求した足回り、日々の暮らしの中で風景や空気の匂いを感じながら走る"TOKYO SLOW"というコンセプト。ちゃんとした自転車が欲しいなと思っていたけど、スピード重視のハイスペックなものではなく、普段着で気軽に乗れるもので、たまには長距離ツーリングをしたり、電車で輪行もしたりできる自転車がいいなと思っていた僕にとって、トーキョーバイクは自分の好みにぴったりあった理想的な自転車だった。
 
気に入ったポイントも似ているような気がするし、今思えば小学生の時に雑誌で、シルクロードを見つけた時と同じような感覚だったかもしれない。だけど3年で製造停止になったシルクロードと違い、トーキョーバイクは今では海外にも多くのファンを持ち20年近く続いている。自分が好きなものがきちんと人々から支持されて長く続いているのはやっぱり嬉しい。
 
それからいろいろあって、今ではトーキョーバイクがトラベラーズ仕様で作ってくれたトラベラーズバイクに乗っているわけだから、人の好みみたいなものは、歳をとっても基本的にはずっと変わらないのだなと思ったりする。

さて、そんなトーキョーバイクが、新しく清澄白河にフラッグシップショップとして「tokyobike.tokyo」をオープンするということで、先日お邪魔させていただいた。

倉庫として使われていた古い建物を生かしたシンプルで無垢な空間に、トーキョーバイクにパーツやバイクグッズがゆったりと並ぶ。1階にはコーヒーショップ、2階にはメルボルン発の観葉植物のショップも併設しているので、例えば店内でコーヒーを飲みながら過ごすこともできるとても素敵な空間でした。久しぶりにトーキョーバイクの皆さんと直接お会いして話ができたのも楽しかったな。
  
トーキョーバイクとトラベラーズはものづくりの考えなどに共通する点も多く、共感できる仲間のような存在だと思っている。それにノートと自転車っていうだけでなんだかワクワクするし、いろいろ落ち着いたら、清澄白河と中目黒を結んで何か楽しいことができたらいいな。

20210712e.jpg
 
20210712d.jpg
 
20210712f.jpg
 
20210712c.jpg
 
20210712a.jpg