2021年9月27日

ファクトリーブレンド

20210926b.jpg
 
アアルトコーヒーの庄野さんからコーヒー豆のサンプルが届いた。10月にトラベラーズファクトリーが10周年を迎えるにあたり、庄野さんに10周年ブレンドを作って欲しいとお願いしたら、快く引き受けてくれて、早速焙煎してくれたのだ。
 
定番のトラベラーズブレンドは、中深煎りでやさしく柔らかい飲み口が特徴だけど、新しいブレンドは10周年ということで、時間の経過を感じる深煎りでとお願いしていた。届いた豆は黒く艶が出ていて袋を開けると深煎りらしいコーヒーの甘い香りを感じた。早速、この日のためにミルからフィルターまでコーヒー道具をオフィスまで持ってきてくれたスタッフが豆を挽いて淹れてくれた。
 
ミルで挽いた粉をフィルターに落としてそこにゆっくりお湯を垂らすと小さな泡がぶくぶくと音を立てながら膨らんでいった。もうそれだけで、このコーヒーが美味しいって思えるような香りが広がった。そして、みんな、仕事の手を止めてコーヒーを飲んだ。
 
しっかり苦みがありながらもすっきりした飲み口で、後味にほのかに甘味を感じ、しみじみと美味しい。やっぱり自分は深煎りのコーヒーが好きだなと思いながらゆっくりと味わった。一緒にコーヒーを飲んでいたみんなも、「いやー、美味しいですね〜」と口々に言った。淹れたての美味しいコーヒーは、いつもの仕事の時間にちょっとした優雅なひとときを与えてくれた。
 
ふと、レイモンド・カーヴァーの短編小説「ささやかだけれど、役にたつこと」を思い出した。小説の最後、大きな悲しみの中にある夫婦が、パン屋の主人の差し出す焼き立てのパンを食べることで、少しずつ落ち着きを取り戻していく。もちろんそれで問題が解決するわけではないし、悲しみが完全に癒やされるわけでもない。だけどパンを黙々と食べ続けることで、そんな中でもなんとか生きていくための活力を得る。
 
ささやかだけど、役にたつこと。原題では、A Small, Good Thing。日々の暮らしの中でコーヒーもそんな存在だし、僕らが作るノートも誰かにとってそんな存在であれば嬉しいな。
 
新しいブレンドをすっかり気に入った僕らは、もともと10周年記念ブレンドとして期間限定で販売しようと思っていたけど、定番のコーヒーにしたいと思った。新しいブレンドの名前の付け方は、アアルトコーヒーのハウスブレンドにならって、中深煎りのトラベラーズブレンドに対し、深煎りの豆はファクトリーブレンドと名付けた。アアルトコーヒーには、浅煎りのアアルトブレンドと深煎りのアルヴァーブレンドがある。アアルトが姓で名前がアルヴァー。それにあてはめると、トラベラーズは姓でファクトリーは名みたいなもの。なんとなく語感も深煎りっぽい感じがするし、ファクトリーブレンドに決まった。トラベラーズにとっては、庄野さんからの最高のトラベラーズファクトリー10周年のプレゼントになった。
 
そんなわけで、アアルトコーヒーのファクトリーブレンドは、トラベラーズファクトリーが10周年を迎える10月20日よりトラベラーズファクトリー各店にお目見えする予定です。

正直に言えば、今回はたっぷり一杯分を飲めたわけじゃないし、早く自分用の豆を手に入れて、改めてファクトリーブレンドを味わってみたい。コーヒーは想像力を与えてくれる飲み物だ。しみじみとトラベラーズファクトリーの10年間に思いを馳せながら飲んでみるのもいいかもしれない。
 
思えば、トラベラーズファクトリーができるとき、2階をカフェスペースのようにしたいと考えたのはトラベラーズブレンドがあったからだし、コロナのせいでしばらくできていないけど、庄野さんに来てもらってのコーヒーイベントはトラベラーズファクトリーの定番イベントみたいになっている。そんな庄野さんが10周年を記念して焙煎してくれたオリジナルブレンド。皆さんもトラベラーズファクトリーやトラベラーズノートと過ごしてきた日々を思いながら味わってもらえたら嬉しいです。
 
10月はトラベラーズファクトリー10周年月間ということで、さらに恒例の記念缶とあわせて、いろいろ企画中です。情報は、公式サイトやSNSで随時アップしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
20210926a.jpg