2022年1月 1日

2022年、初妄想

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皆さま、あけましておめでとうございます。2022年になりました。
 
2022年のトラベラーズノート ダイアリーは、映画がテーマ。ということで、年初めに「トラベラーズムービー」があったらと妄想してみた。
 
主人公は、僕が感情移入しやすいようにイケてない青春を送ってきた、イケてない男。少年漫画の主人公の王道、のび太がそのまま成長したような大人がいいな。年齢は20代で独身。仕事はどちらかと言うと、あまりパッとしない地味なものがいい。例えば文房具メーカー勤務なんていいかもしれない。営業として地方の文房具店を巡っているけど、当然、営業成績は良くない。とりあえず便宜上、名前は虎部(トラべ)トラオとする(主人公さえも安直なダジャレのような名前で押し切る藤子・F・不二雄氏に倣った)。
 
ある日、トラオは酒場で一人でお酒を飲んでいた。すると、たまたま隣り合わせた白髪の老人が話かけてきた。
 
「失礼ですが、あまり調子がよくないようですね」
 
この日、仕事で大事な書類の日付を書き間違えてしまったことでちょっとしたトラブルがあり、少し落ち込んでいたから、きっとそんなオーラが分かりやすく出ていたのだろう。
 
「なかなかうまくいかないですね」
 
トラオはそう答えると、老人の落ち着いた佇まいに気を許したのか、自然とそれまでの苦悩を打ち明けるように話した。老人は、懐深く彼の話に耳を傾けながら、心のこもった温かい言葉をかけてくれた。思いがけず心が通い合う話ができて喜んでいると、老人は別れ際に、革のノートを差し出した。
 
「これは不思議なノートでね。ここにだったら、自然と飾らない本当の声を書き綴ることができる。これをあなたにあげるから、使ってみてください」

手に取ってみると、長く使い込んでいたようで、革にはシミや傷がたくさんついている。なんだかずいぶん汚いノートだな、と思ったけど、優しく話を聞いてくれたことへの感謝の気持ちもあり、「ありがとうございます」と素直に受け取った。

家に帰り、あらためてノートを開いてみる。確かにあの老人のような懐深く温かな佇まいがあり、その日のことを日記のように綴ってみると、素直に自分の思いを書くことができた。さらにページをめくっていると、厚い紙片がしおりのように挟んであるのに気づいた。よく見てみると、電車の切符のようだった。 
 
今では珍しい硬券の切符で「トラベラーズトレイン」と記され、行き先は空欄になっている。切符が挟まれていたページには細かい文字が印刷されたパンフレットのようなものがノートに貼り付けられていた。
 
「トラベラーズトレインは、トラベラーズステーションから不定期で発車しています。いくつかの路線があるようですが、時刻表はないので、いつどこに向かって出発するのか誰も知りません...」
 
この切符の電車のことが書いてあるらしい。読み進めると、どうやらこの切符があればトラベラーズトレインの寝台夜行列車に乗ることができるということが分かった。
 
「車窓の風景は毎日同じような気もするし、昨日とはまったく違う場所のような気もします。ときには線路を離れて、海の上や銀河の中を走ることもあるようです...」
 
トラオは不思議な魅力がある革のノートとともに、行き先不明でどこに辿り着くのか分からない不思議な寝台夜行列車にもすっかり魅せられた。切符をよく見てみると、刻印された日付はちょうど明日になっている。
 
翌朝、トラオは会社に「訳あってしばらく休みます」とだけ告げると、小さなトランクとノートを持って、トラベラーズステーションへ向かった。そんな駅が存在することは知らなかったけれど、ノートにはそこまでの詳細な道筋が記されていた。
 
東京の大きな駅の構内にある関係者しか入れないような暗証番号の鍵がついたドアをいくつか抜け、薄暗い階段を何段も降りたり、上がったりして、さらに古いレンガが剥き出しになった迷路のような長い通路を懐中電灯の光を頼りに歩いていくと、突然目の前が明るくなり、昔のヨーロッパの都市にあったような、高く大きな屋根の下にホームが並ぶ、前時代的な駅舎が目の前に現れた。すると、トラベラーズトレインが汽笛を鳴らしながら今まさに発車しようとしている。トラオは慌てて列車に飛び乗った。
 
映画のオープニングは、この列車に飛び乗るシーンからはじまる。駅のホームではちょうどトラベラーズトレインが発車し、動き出している。そこに中年のビジネスマンが走りながら現れ、列車を必死に追いかけていく。車両に描かれたトラベラーズトレインのロゴがクローズアップしタイトルのように画面に映される。するとビジネスマンの後ろからトラオが走りながら登場し、横目でちらりと彼を見ると追い越していく。画面はスローモーションに切り替わる。
 
トラオは風を切るように疾走し、なんとか列車に追いつくとギリギリのタイミングで最後尾の車両の手すりを掴み、トランクを投入れ颯爽と列車に飛び乗る。トラオはほっとした表情で走る列車の上から振り返ると、ビジネスマンは乗るのをあきらめホームの端でうなだれるように立ち尽くしている。
 
どこかで見たことがあるような気がする方もいるかもしれないけど、あくまでもオマージュ。画面がスローモーションに切り替わるのと同時に流れるBGMは、元ネタはキンクスだったけど、こちらは舞台が日本なので、ブルーハーツの「トレイン・トレイン」がいいかな。「栄光に向かって走るあの列車に乗っていこう〜」と曲が流れた瞬間、オープニングから思わず涙が流れてしまうパターンだ。
 
列車に乗ってから、記憶をフラッシュバックするように、そこに至るまでの過程が描かれる。そして、不思議な寝台夜行列車、トラベラーズトレインの旅が始まる。こんな映画があれば、ぜひ見てみたいな。
 
この「トラベラーズムービー 旅人列車編」がヒットしたら、この前ブログに書いたホテルが舞台の続編映画「トラベラーズホテル編」、中古の年代物の飛行機で世界を何周も巡る航空会社の旅が舞台の3作目「トラベラーズエアー編」、キャラバン隊のように世界を旅しながら音楽の素晴らしさを伝えるインディースレコードレーベルが舞台の4作目「トラベラーズレコード編」など、「男はつらいよ」みたいにシリーズ化するのもいい。
 
毎回トラオが恋をして、結局最後にはふられてしまうマドンナを誰が演じるのかも楽しみだ。まあ、きっと実現することはないだろうけど、こんな映画があったら楽しいだろうな。
 
話は変わりますが、トラベラーズファクトリーでは恒例の新春イベントを今年も開催します。京都では1月2日、東京駅では1月3日、中目黒では1月8日より、スペシャルなノートが当たる新春三角くじがはじまります。さらにオンラインショップでも1月12日より、新春プレゼントキャンペーンを実施します。
 
今年は、トラ年ということでトラベラーズノートを手にしたトラを箔押しています。トラベラーズノートはトラベラーにとって虎の巻のような存在です。虎の子のように大切に使っていただけたら嬉しいです。
 
今年もトラベラーズカンパニーをよろしくお願いします。
そして、2022年が皆さまにとって、素敵な1年でありますように。
Have a nice trip!
 
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