新春恒例行事
トラベラーズファクトリー中目黒の年始の営業開始日前日は、いつもみんなで店内を大掃除するのが恒例になっている。
中目黒は建物自体も古いし、置いてある装飾品やテーブルなども古いものが多い。古いものがよごれたままであれば、単にきたなくて不快なものになってしまう。だれど、歴史ある寺院や職人の道具のように使い続けるのと同時に磨かれ続けることで、新しいものにはない時代を経てきたものならではの味わいや人の温かさが伴った美しさが現れてくる。トラベラーズファクトリーもそういう美しさを感じられる場所でありたいと願っている。
朝、中目黒に集合するとまずはみんなで近くの神社まで歩いて行って、今年も無事に営業できますようにと祈願する。朝のまだ冷たい空気を浴びながらのお散歩と神社参りは気持ちがいい。僕もみんなも特別信心深い訳ではないけれど、なんとなくオープンして最初に迎えた新年からずっと続けている。
トラベラーズファクトリーに戻るとみんなそれぞれ掃除をはじめていく。2階の黒板担当の僕は、まずは雑巾で黒板をきれいに拭き取ると、橋本が新春イベント用にデザインしたトラのイラストをチョークで描いていった。
いつものノートの紙面とは違って、黒板に描くのは美術館に飾ってあるような大きなキャンバスに描くみたいで気分がいい。バランスに気をつけながら描いていく。トラの体を塗っていくのが大変だったけど、みんながバタバタと掃除を進めているのを横目に、掃除に戻るよりもう少し黒板に向かっていたいと思った僕は、わざとゆっくり丁寧に黄色のチョークでゴシゴシ塗りつぶしていった。チョーク1本をまるまる使い切って描けなくなるくらい小さくなると、やっと黒板が完成した。黒板は定期的に描き変えているから、このトラベラーズノートを持ったトラの絵もしばらくすると消えてしまう。でもそんな儚さも旅みたいでいいなと思っている。
ふと窓を開けて外を見ると、雪が降り続いている。昼頃には粉のような雪がチラチラと降っていたので積もることはないだろうな思っていたのに、雪はどんどん激しくなり地面を白く覆っていた。店の前には近所の子供が作ったゆきだるまがこっちを向いていた。
東京でこれほど雪が積もるのは久しぶりだな。雪に弱い東京では、積雪があると交通が乱れたり、転んで怪我をする人がいたり、それなりに大変なんだけど、いつもの風景が白で覆われた趣のある雪景色を変わると、やっぱりロマンチックでワクワクした気分になる。思わず外に出て写真を撮るとインスタにアップした。
掃除が終わると、翌日のオープンに向けて、平台に商品を並べていく。1月はコーヒー月間ということで、コーヒー豆にコーヒー道具を並べる。この日届いたアアルトコーヒーの豆10種類に加え、カモガワカフェのハウスブレンドで合計11種類。まるでコーヒー専門店並みの品揃えだ。箱を開けて豆を手に取ると、コーヒーの香りに包まれた。今年はどの豆を試してみようかな。
店を出る頃には、雪はさらに激しくなっていた。それでも傘をさす気分にはならず、体にたっぷり雪を浴びをながら、転ばないように足元に気をつけて駅まで歩いた。
さて、中目黒のオープン翌日の土曜日は、こちらも恒例の新春イベント。この日は大掃除の日とうってかわって、雲一つない快晴。オープン直前にトラベラーズファクトリーに着くと、すでに店の前にはお客さんがたくさんいて、スタッフが整理券をくばっていた。さっそく僕も店の前に立って、番号順にお客様を店内に誘導したり、整理券を渡したりするのを手伝った。
本当は2階でコーヒーでも飲みながら、のんびりお客さんとお話したりして過ごそうなんて目論んでいたのだけど、予想以上にたくさんの方に足を運んでいただき、結局夕方まで休む間もなくバタバタと過ごすことになった。それでも外でお待ちいただいている間に、皆さんとゆっくり話をすることもできたし、店で忙しくバタバタするのも久しぶりでとても楽しい時間を過ごすことができた。
長い時間お待たせしてしまったり、早々に三角くじもなくなってしまったり、ご迷惑をおかけしてしまいましたが、来年は今回の反省を活かして、さらに皆さんに喜んでいただけるイベントになるようがんばります。来年こそ、振る舞いコーヒーができるといいな。年始の新春くじは、1月12日よりオンラインショップでも開催しますので、こちらもぜひ。
そんな訳で2022年もトラベラーズファクトリーをよろしくおねがいします。今年はいろんなことがうまくいったらいいな。