桜とコーヒー
目黒川の桜は七分咲きといったところだろうか。空を見上げると、今にも雨が降りそうなどんよりした雲に覆われていたけれど、漂う空気は暖かく春の陽気に包まれていた。コロナがはじまってから3回目の桜は、もうすぐ満開を迎えようとしていた。
目黒川から足速にトラベラーズファクトリーに戻り、2階でイベントの準備をしていると、アアルトコーヒーの庄野さんがやってきた。挨拶をして荷物を置くと、さっそく豆を挽いて、コーヒーを淹れてくれる。コーヒーの香りが漂う中、いつものように少し猫背でコーヒーを淹れる庄野さんを眺めながら、やっぱりトラベラーズファクトリーの2階には庄野さんが似合うなあとしみじみと思った。
10年前にトラベラーズファクトリーがオープン以来、庄野さんは毎年欠かさず、年に2回は徳島からこの場所に来て、コーヒーにまつわるイベントを開催してくれていた。だけどコロナが始まってから、イベントができず、この日はやっと迎えた2年ぶりのコーヒーイベントになる。この日を迎えるまでも、年末に予定日を決めてから、2回延期して、3回目の正直でやっと開催することができたから、余計に感慨深い。
庄野さんが最初にみんなに淹れてくれたのはファクトリーブレンドだった。昨年10月にトラベラーズファクトリーの10周年を記念して庄野さんが作ってくれた新しいブレンド。初めて味わう庄野さんが自ら淹れてくれたファクトリーブレンドは、自分で淹れたときよりも深煎りならではの甘味が感じられ、優しい味がした。
イベントは、お客さんが途切れることなく、かと言って人でいっぱいになりすぎることもなく、感染予防のことも意識していた僕らにとっては、理想的な流れで進んでいった。久しぶりの庄野さんのイベントということで、tico moonの影山さんにAIR ROOM のかもさん、ミュージシャンの山田稔明さん、mille booksの藤原さんも来てくれて、僕らも彼らと久しぶりに言葉を交わすのを楽しんだ。
イベントが終わった後は、ささやかな打ち上げを兼ねて、2階で軽く飲みながら談笑をする。この日のために飲まずにとっておいたコラボバージョンの台湾ビールの栓を抜いて、くだらないことから、音楽や仕事に関すること、政治的なことまで、2年分溜まったいたものを吐き出すように話をした。
そうそう。こういう時間が必要だったんだよなあ。会って話をすれば、次はこんなことをしよう、といったアイデアも浮かんでくる。今年こそ徳島に行って14gでイベントしましょうと約束して、打ち上げは終わった。
今回の庄野さんとのコーヒーイベントを皮切りに、4月からいろいろとイベントを予定しています。トラベラーズファクトリー中目黒と京都でのイベントはもちろん、それ以外の場所でもいろいろ計画をしているので、楽しみにしていただけると嬉しいです。
桜とコーヒーとともに春がはじまった。今年はたくさん旅ができるといいな。久しぶりのキャラバン復活かな。