三島・沼津 One Day Trip
ここ数日、夏の暑さは少しだけ影を潜め、かすかに肌寒さを感じるようなときもある。もう9月になってしまったんだな。年々夏の暑さは厳しさを増しているけれど、それでも僕は夏が好きなので、夏の終わりになるとちょっと憂鬱になる。そんな気分を紛らわすには旅に出るのがいい。
そんなわけで、先週日帰りで沼津まで行ってきた。来週からトラベラーズファクトリー中目黒で始まるイベント用の古書を預かるためにweekend booksを訪問してきたのだ。weekend booksの古書コーナーは、トラベラーズファクトリーのオープン翌年から毎年開催していて、今年で11回目になる。
店主の高松さんは、トラベラーズノートユーザーでもあるし、個人的にも本や音楽の趣味も近いので僕自身も毎年どんな本が届くのか楽しみにしているイベントでもある。これまでは、高松さんご夫妻とその友人でもある伊豆仁田のケーキカフェirodori の浅賀さんご夫妻が車で中目黒まで来てくれて、本を届けてくれていた。だけど、コロナがはじまってからは宅急便で送ってもらっていた。僕らもしばらくweekend booksを訪れていなかったし、久しぶりに高松さんたちにお会いして話をしたいと思っていたので、今年は直接お邪魔して引き取りに行くことにした。
先週の金曜日、朝早く家を出て都内某所に集合すると、車で沼津まで向かった。途中小田原に立ち寄って、箱根の山を越えると、それまで降っていた雨が止んで、うっすらと晴れ間が見えてきた。そんなことでも気分が盛り上がってくるのが旅の高揚感。まずは、ずっと行きたかったハンバーグ屋さんでお腹を満たすとweekend booksを訪れた。
weekend booksは、沼津の街の中心から少し離れたちょっと分かりづらい場所にある。だけどその分、お店を見つけると、自分だけの秘密の場所を見つけたようなワクワクした気分が湧き上がってくる。扉を開けると、まずは広い壁を覆うように置かれた本棚に並んだたくさんの本が目に入ってくる。さらにテーブルには、そのときどきで高松さんが選んだ素敵なもの、不思議なもの、かわいいもの、きれいなもの、おいしいものが並んでいる。
ちょうど訪れたときのテーマは「人形たちの夜」。とぼけた表情の動物たちのぬいぐるみに、ミニチュアサイズの家具やお茶会セットなどがまるで美術館みたいにたくさん並んでいる。その片隅にトラベラーズノートやリフィルが並んでいるのが嬉しい。こんな品揃えのお店は今まで見たことないのにどれも違和感なく、心地よさそう並んで見えるのは、きっとそこにある全部が高松さんの好きなもので、それぞれにたっぷり愛が注がれているからなんだろうな。
そして、店内には、おだやかな表情でお店を見守る高松さんご夫妻がいる。この日は定休日だったこともあって、僕らもゆっくりくつろいでたくさんお話しをした。旅をして、気持ちいい空間で、心が通じ合える方と会い語り合う。そんな幸せなひとときを過ごした。
weekend booksを出ると次に向かったのは、伊豆仁田のケーキカフェirodori。沼津を訪れた際は、weekend booksとともにここも訪れるべき場所のひとつ。古民家をリノベーションした店内だけでも一見の価値があるすばらしい空間だけど、そこでいただくケーキは感動的ですらある。
久しぶりにお会いしたオーナーパティシエの浅賀さんは「生フルーツのケーキは売り切れてしまったんですよ」と申し訳なさそうに言ったけど、アップルパイもブラックチェリーパイもフルーツそのものの美味しさがたっぷり感じられる素晴らしいおいしさだった。ちょうど閉店間際だったこともあって、浅賀さんとゆっくりお話しできたのも嬉しかった。
たった1日の沼津の旅を満喫すると、今度は預かった本を届けるために、トラベラーズファクトリー中目黒に向かった。途中、トイレのために立ち寄った高速道路のサービスエリアで車から外に出ると、吹き抜けていく風にほのかに漂う冷気を感じた。楽しい旅と夏の終わりを一度に感じて、メランコリックな気分が心に広がった。
夏はもうすぐ終わってしまうけれど、今月はもう少し長い旅、トラベラーズカンパニーキャラバンがある。そのことを思い出すと、この日の沼津の旅が、キャラバンのプロローグのように思えて、次もきっといい旅になりそうな予感が湧き上がった。旅が終わったら、また新しい旅がはじまる。そして旅はさらに新しい旅へ誘ってくれる。だから旅は永遠に終わらない。そんな風に考えながら心の憂鬱を打ち消そうとした。
weekend books の古書コーナーは、9月7日よりトラベラーズファクトリー中目黒で開催します。今回も高松さんが選んでくれた素敵な本がたくさん並びます。合わせてトラベラーズファクトリーでは「読書月間」として、オリジナルブックマークのプレゼントやさまざまな企画がはじまりますので、ぜひ楽しみにしてください。旅ができないときは、本を読むことで心の旅をするのもおすすめです。皆様もぜひ。