2023年3月22日

キャラバン旅の合間に

 トラベラーズカンパニーキャラバンで、奈良-犬山-沼津の3都市を巡る旅をしてきました。今回はまず奈良まで新幹線で入り、そこからはレンタカーを借りて、奈良から犬山、沼津を巡り、最後は三島からは新幹線で帰ってきました。

 資材や商品を積んで車で移動しながらのイベントは、インディーズバンドのライブツアーか旅芸人、フーテンの寅さんみたいで、そういえば小さいときはこんな仕事をするのが夢だったのを思い出します。旅先でお客さんと楽しくお話をして、イベントを終えたら仲間とお酒を飲みながら語り合い、また次の旅先へと移動をする。できることならこのままずっと日本全各地から海外までキャラバンの旅を続けたかったけれど、帰る場所があるからこその旅ですよね。たぶん、また近い将来旅に出る機会があると思うので、それを楽しみに、旅が終わってからも旅するように暮らしていこうと思います。

 今回の旅で訪れた、奈良、犬山、三島は、どこも決して大きな都市ではないのですが、その分、それぞれ歴史を感じる趣きのある場所で、イベントの合間や移動の途中でそんな町の空気を感じるのも楽しい時間でした。

 例えば奈良での夜のこと。NAOTスタッフの皆様と楽しい宴を終えてホテルに戻ると、近くに銭湯があると聞き、そこに向かうことにしました。雨の中、十分ほど歩いてたどり着いた花園新温泉は、懐かしい佇まいの古き良き銭湯でした。酔いを覚ますようにゆっくりお風呂に浸かり、風呂上がりにはビンのコーヒー牛乳をぐびぐび飲む。ふと時計を見ると閉店時間の23時半を過ぎているのに気づいて、あわてて服を着て外に出ました。

 あいからず雨は降っていましたが、ポカポカの体にはむしろ雨の中のひんやりした空気が気持ちいい。昼間は観光客がたくさん歩く奈良の旧市街、ならまちもこの時間には他に誰も歩いていません。僕は風情ある街並みを独占するように、気分よく歩いてホテルに向かいました。すると、道の先に何人かの人影のようなものが見えてきました。この時間になんだろうと、ちょっと警戒心を抱きながら進んでいくと、それは人ではなくて、5、6頭で歩く鹿の集団だと気づきました。鹿は近づいても逃げることなく、僕に目線を合わせてきます。しばらくにらめっこのような状態が続きましたが、やがて鹿たちもそれに飽きたのか、集団でスタスタと町の奥に進んでいきました。

 昼は公園の中にいる鹿が、夜になると公園を出て街をさまよい歩いている。そんな夜の鹿たちの姿は、まるで見てはいけない鹿たちの秘密を知ってしまったような気分にさせてくれました。旅先では、こんな出来事に遭遇するだけで、嬉しくなります。

 奈良の次の目的地、愛知県犬山は、はじめて訪問する土地。それだけで旅の高揚感も高まります。会場となったNAOT NARAがある場所は、一見すると看板も朽ち果てたような古いビルが並ぶ、地方都市の典型的なシャッター商店街のようですが、その中には古いぶん味わい深い建物を活かしたレストランやショップ、ギャラリーなどが点在していて、逆に今を感じる面白いエリアになっています。イベントの合間にそれらを覗くも興味深かったです。

 犬山でのイベントが終わると、この日も打ち上げで楽しい時間を過ごし、犬山にもう一泊しました。翌日は沼津に夕方まで入れば良かったので、朝食をとると現存する最古の天守閣を持つという犬山城を訪れました。天守閣を登ると、眼下には木曽川と犬山の街並みを見下す素晴らしい眺望。しばし戦国時代の武将の気分で眺めを楽しみました。

 その後、もう少し時間があるということで、前日にNAOTの宮川さんがおすすめしていた桃太郎神社に行ってみることにしました。桃太郎と言えば、岡山県が有名ですが、愛知県犬山市にも「桃太郎伝説」が残っているそうです。桃太郎神社は、その桃太郎を祀っていて、周辺には、桃太郎に犬、猿、雉、さらに退治された鬼の像があちこちにあります。これがなんとも言えずシュールというか、ユーモラスで味があり、不思議な世界が広がっています。個人的には国宝の犬山城と並ぶ強い印象を与えてくれた体験となりました。

 昼食に名古屋名物のひつまぶしをいただき、その後は沼津までノンストップで車を走らせました。最後の旅の目的地、weekend booksに着くと、イベントの準備を済ませ、三島の宿に。三島といえばうなぎが有名で、さらにその近くには新鮮な魚介類が楽しめる沼津港もありますが、昼食に贅沢をしていたこともあり、キャラバン最後の夜は、駅前の町中華で軽く済ますことにしました。だけど、餃子にチャーハン、焼きそば、天津飯など、頼んだものがぜんぶおいしくて大当たり。結局お酒も飲みながらしっかり食べてしました。キャラバンの旅では、いろいろを食べ過ぎたせいで、ホテルにある大浴場の体重計にのったら、旅の前からしっかり1キロ体重が増えていました。まあでも旅はそういうものです。

 そして、今日、最後のweekend booksでのイベントも無事楽しく終わることができました。そういえば、イベントのことにはあまり触れていませんが、それぞれたくさんの方が足を運んでくれて、みなさん楽しそうにノートを作っている姿をみることができて、僕らもほんとうに楽しかったです。ありがとうございました。今回の旅は終わってしまいましたが、いつかまたどこかの旅先でみなさんにお会いできるのを楽しみにしています。