2008年1月25日

TRAVELER'S books 旅とエコロジー

地球温暖化や環境破壊のニュースなどを見たときに、自分自身の直接的な問題としてリアルに感じることはなかなか難しいことです。環境問題を利用した政治的な思惑や商売としてのマーケティング的発想が、本気で環境のことを考えていない場合が多いのも事実です。今回の再生紙の問題はまさしくそうでしたし、CO2の排出枠が取引されるというのも本質的に考えるとおかしいような気がします。
 
ただし、南太平洋の島々の海面上昇や北極・南極の氷河の融解の状況など、危機的状況がせまっているのも事実です。旅人は、その場所を実際に訪れ、目にして、体感することで、そこを遺していきたいとリアルに感じることが出来ます。ニュースを見た時、そこが行ったことがある場所であれば、その場所とそこで会った人たちが目に浮かびます。そんな身近な感覚を大切にしながら、環境を考えることが大切だと思います。
 
今日は、エコロジーを考えるきっかけになる旅の本を。
 
 
「日本の川を旅する」 野田知佑著
 
カヌーに乗ったことはないのですが、川の水面をゆっくりと走る感覚はいつか味わってみたいと思っています。そう思ったのも、野田さんの本を読んだのがきっかけです。特に彼の場合は、スポーツとしてのカヌーではなく、旅の手段としてカヌーの魅力を語っていのが良いですね。日本の川というのは、環境破壊の影響がもっとも早く顕著に現れた場所で、そのことによって自分の好きな場所が奪われていくことへの怒りとして環境問題を語っている姿は、説得力があります。
 
 
「青春を山に賭けて」 植村直己著
 
植村直己氏の作品はどれもおすすめなのですが、一冊選ぶとするとこの「青春を山にかけて」かな。山に登ることが好きな青年が、大学を卒業して就職をせずに、世界中を放浪しながら、好きな山に登るひたむきな姿が描かれています。自然にも、人にも謙虚かつ大胆に向かう姿勢が素晴らしい。彼が生きていたら、今どんなことをしていたでしょう?
 
 
「パパラギ」 岡崎照男、ツイアビ著
 
1915年、南太平洋のサモア島の酋長ツイアビが、初めてヨーロッパを旅したときのことを島の人たちに語った演説を本にしたものです。未開の地の人の純粋な目線で、文明国を見たときに感じる疑問や感想は、強烈な文明批判であると同時に、人としての本質をシンプルに教えてくれるメッセージとなっています。現在、地球温暖化によって、南太平洋の島々がなくなってしまうという危機にあるのは、なんとも言えず皮肉なことです。
 
 
「顔のない国」 カート・ヴォネガット著
 
昨年4月に亡くなったヴォネガットの遺作エッセイ集です。環境の話ばかりではないのですが、永遠に発展していくことを目指そうとする科学や経済に対して強烈な批判を投げかけながら、同時に人間への愛情を優しく語っています。環境を壊していくのは人間です。でも、私たち人間が地球のために出来ることもたくさんあるはずです。
 
 
「ウォールデン 森の生活」 ヘンリー・D・ソロー著
 
純粋に言うと、環境問題について語っている本ではありませんが、著者が都会から森の中へ行き、湖のほとりで自活の生活を哲学的に書いた本です。森の生活を冷静に深く見つめることで、自分自身や世の中のしくみについて解き明かしていきます。難しい本ですが、時間をかけて繰り返し読んでいきたい本です。
 
 

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