2008年12月19日

HOW TO 大冒険


 
この本は、中学生の頃手に入れて何度も読み返した本。エジプト考古学者として有名な吉村作治教授が、まだ有名になる前の1974年に書いた本。自らエジプトの調査発掘の体験を交えながら、冒険への心構えやノウハウを綴っています。
 
吉村氏は異国で冒険をしたいという欲求を持ちながら学生時代をすごしていました。そんな中で、エジプトで調査をするという学術的な目的を見つけることで、まわりの了承を得て冒険へと旅立つことができました。つまり、エジプトの調査は口実で、異国で冒険することが目的だったのです。
 
ただし、エジプトに行ってからは、カイロ大学へ留学し考古学を学び、さらにエジプト人の女性と結婚をするためイスラム教に改宗するほど、その国の生活に身をひたしていました。(現在はその女性とも別れ、無宗教を公言しています)
 
さらに、アラブゲリラに参加したり、クーデターに遭遇した時はその将校にインタビューをしたり、強い行動力による冒険譚は、その時代性を感じさせてくれるとともに、とてもわくわくさせてくれます。
 
この本が出版された時代は、今ほど海外旅行が一般的ではなく、若い人が目的もなく、海外に旅立つことは少なかった時代です。それゆえに、海外に出ることにたいして、気負いや過度の力みが感じられたりもしますが、その分、情報も少なく旅先での驚きや感動も大きかったのかもしれません。
 
知らない家にタダで泊まる方法、安いメシ屋を探す方法から、ラクダに乗る方法や、肉と粘土で干し肉を作る方法まで、これらのノウハウは当時の若者にとっては数少ない海外への冒険のための情報だったのかもしれません。
 
もちろん今読んでも役に立つ冒険術もたくさん書かれています。でも、今読んでなにより共感できるのは、その冒険に対する姿勢。
 
「冒険がロマンであるなら、なにも日本を脱出し、海外を放浪するばかりが冒険ではない、ということだ。きみがもし、ある女性が好きになったとき、なんとかして彼女から関心を持ってもらいたいと祈るだろう。その第一歩として、どういう形でその女性に近づくか考えるだろう。そのとききみにとっては、それは大冒険になるだろうし、その行動に踏み切ることが、この本に書かれた冒険のテーマと一致するのではないのだろうか」(吉村作治著「How To 大冒険」より)
 
決して、名作とか大作ではありませんが、中学生の頃に出会ったことで、その後の私の価値観に少なからず影響を与えている本です。古本屋で見つけたら、手にとってみる価値がある本だと思います。