2009年4月23日

Slumdog Millionaire

インドに行った時、何よりショッキングだったのは街中で見かける物乞いの人達でした。繁華街や駅、観光地など人が集まる場所を歩くと、痩せ細った老女が赤ちゃんを抱きながら手を差し出してきたり、ボロをまとった小さな女の子が後ろから洋服のすそを引っ張ってきたりする物乞いに必ずと言っていいほど出会いました。
 
さらに衝撃的だったのは、病気や怪我などで傷付いた体で憐みを誘おうとする物乞いです。駅のホームいると、何かの病気で足が潜水用の足ひれのように肥大化した少年が、走って追いかけてくる。電車が駅に止まると、窓から小銭がのった指がない手を差し出してくる。強烈だったのは、器用にムチで自分の体を自分で打ち付けている少年。そんな光景に出会うと、直視できず思わず目を背けざるを得ませんでした。
 
もう一つインドで印象的だったのは、人々の押しの強さ。駅を降りると沢山のリキシャやタクシーの運転手に囲まれるのは、他の国でもよくあることですが、とにかく押しが強くしつこい。普通に乗りたい時でも運転手を決めるのに一苦労。そして、なんとか乗ることができたら、今度は望んでいる場所まで連れて行ってもらうのが大変。ホテルの名を言うと、そこは潰れたとか高いとか難癖をつけて、自分がコミッションをもらえる
ホテルに連れて行こうとします。
 
辿り着いても、乗る前に決めた値段より高いお金を請求してくるので、値段交渉をもう一度しなければなりません。その強烈な押しの強さに慣れるまでは、ちょっとした移動でも疲れ切ってしまいました。
 
物乞いや運転手たちを見て思ったのは、生きることへの耐性の強さ。日本で衣食住を保証されたのんびりとした学生生活を送っていた私にとっては、そのパワーに圧倒され続ける旅でした。
 
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ロック映画の名作のひとつ「トレインスポッティング」の監督ダニー・ボイルが、インドを舞台に撮った映画。さらに、今年のアカデミー賞最多受賞という話題の映画でもある「スラムドッグ$ミリオネア」を見に行きました。
 
スラム出身の若者がクイズ番組で次々と問題を解いていく、そして、その答えがかつての過酷な生活の中にあったとして回想シーンになり、クイズ番組の場面と交互に映し出されていきます。
 
ムンバイのスラム街の少年が悲惨な辛い状況のなかでしたたかに生きていく姿を、エンターテイメントとして王道のストーリー展開とともに見事に描いています。イスラム教とヒンズー教の対立、貧困、差別、虐待などインドが抱える暗い問題を描いていますが、その登場人物たちは、悲惨な状況でもとにかくパワフル。生きることにひたむきな姿は、とても美しく感動的です。
 
今思うと、インドの旅で感じた人々の生きるパワーの強さは、今でも私の心に大きな影響を与えてくれているのかもしれません。
 

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