2009年5月18日

旅先のカフェ YUSHI CAFE(長野・望月)


 
GWの松本バイク旅のことをもう少しだけ。
 
東京に帰る日、旅館を出て何店か行きたかったお店を見た後、松本市内を抜けて山に入りました。すると、朝には降っていなかった雨がまた降り出してきました。憂鬱な気分になりながら、雨具を着るためにバイクをとめると、リアシートに載せていた荷物が無くなっていることに気付きました。
 
そこには、松本で買った串田孫一の本やおみやげ、さらにメガネやiPod用のスピーカーなどが入れてありました。袋に入れて、紐とビニールテープで留めておいたのですが、雨でテープが剥がれ、さらに走る振動で紐がはずれてしまったのです。しばらく引き返して探してみましたが、見つけられません。雨で憂鬱になった気分がさらに落ち込みましたが、諦めて再び東京に向かいバイクを走らせました。
 
松本から東京への帰り道、寄ってみたい1件のカフェがありました。信州の街道沿いにある小さな集落、望月にそのカフェ「YUSHI CAFE」があります。
 
田舎の田園風景に大きな民家が点在する中、それらの中にすっかり溶け込んで目立たないように佇んでいました。YUSHI CAFEは、もともとそこにあった古い民家を改築していて作られています。田舎の親戚の家におじゃまするように引き戸を開け、中に入りました。
 
年代を感じる無垢な木の床や柱、ひろい店内にセンスよく配置されたアンティークの家具や小物。外は雨。まだ帰り道まで先は長いのですが、しばらくここでゆっくりと過ごすことを決めました。壁や障子がはずされた開放的な空間に、縁側の向こうの磨りガラスの窓から優しい光が差し込んできます。
 
漆喰の壁に、黒いソファと木のテーブル。床の間に、アンティークな小物と一緒に置かれた写真集やグラフィックデザインの本。木の天井に付けられたファンがゆっくり回転し、ストーブで暖められた空気を穏やかに揺らしています。そして、真空管アンプのステレオから流れるチェット・ベイカーの甘く切ないジャズボーカル。もともと開放的な造りである日本家屋の良さを再認識させてくれて、同時にその良さを活かした新しい暮らし方を教えてくれます。
 
私は、奥のソファでゆっくりと過ごしたのですが、カウンター席では、地元の方々と思われる人達がコーヒーを飲みながら店主とお話をしています。失礼ながら、店主と地元の年配の女性のお話が耳に入ってきました。都会暮らしをしていた店主が暮らしを変えたくてこの場所にカフェと作ったとのこと。さらに、同じ用な想いを持ってここに移住してくる若い人達が増えてます。と店主が言うと、地元の女性は、でもその分年寄りも増えているんですよ。とおっしゃっていました。
 
このカフェは、新しく来た若い人達と昔から住んでいる地元の人達との交流の場としても機能しているようです。地元の人達には、新しいライフスタイルを教え、そして、新しく来た人達は、古い伝統や技術を学ぶ。そんな素敵な交流が生まれているのかもしれません。
 
立ち去りがたく1時間以上も居続け、ふと、外を見ると雨はもう止んでいました。雨と荷物を無くして憂鬱だった気分もなんとか晴れてまた東京に向かってバイクを走らせました。