2009年7月 3日

Thanks! Brian


 
久しぶりに下北沢に行った時、気になっていたカフェがあったのを思い出し、寄ってみることにしました。
 
cafe ordinaireは、自由に読めるたくさんの本とシンプルで心地よいインテリアが魅力のカフェ。カウンターテーブルに座り、コーヒーをオーダーすると、カウンターの上ににずらりと並んでいる本を眺めました。それらは、1冊ずつ丁寧にパラフィン紙でカバーが掛けられています。
 
目の前にはロック関連の本が並んでいました。その中から、ブライアン・ジョーンズのことが書かれた本を手に取りました。ブライアン・ジョーンズは、初期のローリングストーンズのリーダーで、ギタリスト。その一週間前、彼をテーマにした映画を見て、音楽面の業績にはほとんど触れずに、スキャンダラスな面を強調した描き方に、なんだか納得がいかないものを感じたのを思い出したのです。

その映画の中でのブライアンジョーンズは、音楽的才能を失い、他のメンバーから邪魔者扱いされながらドラッグと女に溺れて死んでいく、単なるダメ人間。しかし、この本の冒頭で書かれているように、「ブライアン・ジョーンズは1人目のローリング・ストーンズ」だったのです。さらに、「ブライアンこそがこのグループの創始者であり、そして世に売り出した男」なのです。
 
YouTubeなどで初期のストーンズのライブ映像を見ると、最初のヒット曲となったNot Fade AwayのハープやLittle Red Roosterのスライドギターを演奏する姿がむちゃくちゃかっこいいし、バンドサウンドをリアルなブルースを聴かせるレベルに引き上げるのに大きな役割を担っています。さらに、Paint it BlackやStreet Fighting Manでブライアンが演奏しているシタールの音は、インド音楽的な味付けではなく、ちゃんとロックの音になって、サウンドに深い奥行きを加えています。
 
ストーンズがブルースのカバー中心の構成からミック&キースのオリジナル曲中心のアルバムを制作していくなかで、30種類以上の楽器を操ることができた彼の音楽的なセンスが大きく貢献していることは疑いのない事実です。
 
好きなアルバムの一枚「Between The Buttons」、その中では、ギター、ハーモニカの他に彼が奏でるリコーダー、セロ、マリンバ、チェンバロ、アコーディオン、ダルシマーなどが効果的に使われています。例えば、名曲She Smiled Sweetlyなんてあのメランコリックなオルガンがあって成立する曲。
 
Sympathy for the Devilのレコーディングシーンを映像化した「One Plus One」では、虚ろな目をしてキースの指示通りただコードストークをしているだけで、しかも耳を凝らしてみても、CDからはその音を耳で拾うことはできません。その頃のブライアンは、ほとんどレコーディングにも参加しておらず、やっかい者だったことは事実だと思います。
 
ただ、この本によると同曲が収録されているアルバム「Beggars Banquet」の中の、No ExpectationsやJigsaw Puzzle、Salt of The Earthで聴ける印象的なスライドギターは、ブライアンジョーンズによるものとのこと。ゴダールによる映画、「One Plus One」が、Sympathy for the Devilでなく、せめてStreet Fighting Manのレコーディングシーンを撮っていたら、なんて思ったりもします。
 
もちろん、ミックやキースが優れたアーティストであることは疑う余地のないことです。もうこの世にいないアーティストとしてブライアンのことを考えるとき、彼がどう破綻し破滅したかではなく、彼がどんな素晴らしい作品を残し、影響を与えてきたかということで評価するべきなのだと思います。
 
そういえば、80年代のミュージックシーンに多大な影響を与えたマイケル・ジャクソンも晩年の彼の奇行ではなく、作品や表現によって記憶に残っていくことを願います。
 
7月3日はブライアン・ジョーンズの命日。ちょうど40年前の今日、自宅のプールで彼は亡くなりました。それは、私が生まれて1ヶ月と少し経った頃のことです。