2010年1月25日

FLAT HOUSE LIFE


 
トラベラーズノートホームページのプロフェッショナルユーザーに掲載させてもらっているイラストレーターのアラタ・クールハンドさん。
 
前にそのお宅にお邪魔させて頂いたのですが、古い平屋を素敵に住みこなしているのに、とても感銘を受けたのを覚えています。その後、もう少し広い平屋に引っ越したとのことでお誘いを受け、先日お邪魔しました。
 
アラタさんが住んでいる平屋は、「米軍ハウス」と呼ばれる、戦後、進駐軍のアメリカ兵の住居として建てられ、その後ベトナム戦争終結後の引き上げにより、日本人に貸し出されるようになった築40以上の建物です。玄関の先にはフローリング床の広いリビング、そこにゆったりと置かれたソファー。車が停められるガレージ、開放感のある庭など、住居に対する意識が高い欧米人のために作られた建物は、まさに古いアメリカ映画の中のセットのような佇まい。
 
築40年~50年の古い建物のため、機能的でなかったり、老朽化による汚れや傷、ヒビなどがあるのですが、それを味わいとして楽しむことで、むしろメリットに変えています。そして、その家賃もその築年数と少し不便な場所にあるというだけで、床面積が同じ広さの都内のマンションと比べるとかなり安価で借りる事ができるのです。都内の画一的な坪効率やコスト重視のマンションや建売一軒家と比べると、不便な点も多いのでしょうが、何より住むことを楽しむという気分を喚起してくれます。ミッドセンチュリーのフロアライトの優しい光の中、1961年製のBraunの真空管プレイヤーでモダンジャズを聴き、アラタさんお手製のパスタを頂きました。当然、話は盛り上がり、楽しい時間を過ごすことができました。
 
そんな暮らしは映画やアルバムのジャケットの中だけの世界でなく、さらに夢みたいなことでもなく、ほんの少し考え方を変えて、ちょっとの不便さを受け入れて、本気で暮らしを大切にすることで実現できるのです。これは目からウロコの体験でした。
 
そのアラタさんが、様々な人の古い平屋の素敵な暮らしを綴った本が「FLAT HOUSE LIFE」。何度もペンキを塗り替えられた壁をジャスパージョーンズの絵のようだと表現したり、壁に打ち付けられている錆びた釘と老朽化で現れたクラックの不思議な配列をアブストラクトアート(抽象芸術)と感じる感性。そして、その感性を持って、本当に自分らしい豊かな暮らしを楽しむこと。
 
この本にはそんな夢を現実に変える方法が詰まっています。