2010年5月31日

We love a Factory!


 
ものづくりの仕事をするようになって、さまざまな工場を訪れましたが、今でもはじめての工場を訪れる時は、胸が高鳴ります。たくさんの使い込まれた機械や道具。素材が形を変えて、モノになっていく過程。それに関わる人たちの知恵や経験によって培われた技。それらは、美しく、見ている私たちの創造力を刺激してくれます。
 
先日、ブラスプロダクトのペンケースとペンのの軸を作っている工場を訪れました。どちらも東京の下町に古くからある小さな工場です。
 
真鍮の無垢感を活かした仕上げや、微妙なカーブのラインの美しさを出すために、職人さんの匠の技が活かされています。実際にものが作られている現場で、お話を聞くと様々な工夫によって作らていることが分かります。例えば、ブラスペンの軸はもともと板状の真鍮を何度もプレスすることで筒状に変えていきます。その際、一度プレスしたものを釜で温めてからゆっくり冷ます「なまし」という工程を行います。これによって伸ばした後に、再び真鍮の内部組織が均一化されます。プレス→なましを4回くりかえし、やっと筒状の軸ができあがります。そして、その後さらに先をしぼり、頭にスリットを入れ、刻印を打ったのちにやっとあの形ができあがります。
 
一つずつ手でプレス機にセットし、手際良く丁寧にプレスしていく様を見ていると、機械を使ってはいますが、手を動かしていくことで作られていくことを実感できます。それは手作りに近く、大量生産に向くような
作り方ではありません。しかし、それゆえにあの繊細な美しさが表現できているのだと思います。
 
それぞれ半世紀以上前からある工場ですが、昨今の中国などへの生産拠点の移動により昔は近くにたくさんあった同じような工場はかなり少なくなってしまったようです。もの作りの仕事に関わっている端くれとしては、日本のクラフトマンシップを次世代に残していくために、その良さを伝えていく努力をもっとしていかないといけないですね。