日常で歌うことが何よりもステキ
もう過ぎてしまいましたが、先月の9月でこのトラベラーズ日記をはじめて3年が過ぎました。正直に白状してしまうと、日記帳を長年作っている会社にいながら、このブログを書くまでちゃんと日記を書いたりしたことはありませんでした。
小学校の夏休みの宿題や旅に出た時に書いたりしたことはありますが、日常的に日記を書くのは何度かトライしたけど続いたことがありません。そんな私がなんとか日記を続けられているのは、ミュージシャン早川義夫氏がそのブログで書いている理由と同じです。
「きっと誰かがこのホームページを開いてくれているだろうという思いがあるからである。」
「日常で歌うことが何よりステキ」は、その早川氏のブログを本にしたものです。それにしても、この日記は切なくて滑稽なほどに純粋でリアル、そして、自由で美しい。
「ただのスケベおやじに過ぎないけれど、毎日恋をしている。昨日も恵比寿に向かう湘南新宿ラインの中で、検札に来たNさんに一目惚れした。」
「一月、女の子と仲良くなる。二月、島めぐり、温泉めぐり。三月、一緒に部屋を探す。四月、頑張っちゃう。五月、曲が生まれる。六月、新婚旅行。十一月、赤ちゃん『いつもくん』産まれる。十二月、六十歳の誕生日を迎える。そんな夢を見る。」
この日記を読むことで、早川氏の6年の月日を少しだけ体感することができますが、その中でひとつのクライマックスとなるのが、ともにライブをおこなっていたミュージシャンHONZIさんの死。著者の優しさに満ちた彼女への愛情とその死に対する喪失感。HONZIさんを全く知らない私も、思わず涙を流してしまいました。その時書かれた日記が、彼女の音楽のことを語りながら、同時に自分自身の音楽や文章への思いを語っています。
「HONZIの音は、テクニックを披露するような音楽とは違う。やさしい音なのに初めて聴く音だった。意外な音なのに奇をてらうわけではない。かすかな音もよく聴こえ、激しい音もうるさくない。常に歌を生かし、自分を主張するというより、降りてくる音を受け止め、奏でているだけのようだった。悲しみと優しさに包まれている、たましいそのものだった。」
彼の日記もその音楽と同じように悲しみと優しさに包まれている。こんな風に優しく美しく、正直に飾らずに自分の思いを綴ったり、話したりすることが出来たらいいなあと思います。
早川氏のHPで、現在進行形の日記を読む事ができます。そのHPのプロフィールに、氏の著書「たましいの場所」について書いた当日記へのリンクが貼られているのを発見。彼がそれを読んでくれたんだと思うとそれだけで嬉しいなあ~。