2011年11月28日

ぼくのしょうらいのゆめ


 
正直に言ってしまうと、僕は人生において何かを選択するために、大きな決断をしなければならないということに直面したことはなくて、興味の赴くままだったり、単なる偶然だったり、またはそうせざるを得なかったりで、自然と今の状態が出来上がっているような気がします。
 
今だから言えることですが、会社を選ぶときも、家から近い会社なのでなんとなく説明会に行ってみて、なんだか感じが良さそうだから、受けてみて、一番最初に内定がもらえたので、決めてしまいました。そういえば、高校も大学も1校しか受からなかったので、悩む余地がなかったし。
 
トラベラーズノートが生まれて、イベントをやったり、仲間ができたり、トラベラーズファクトリーをはじめたり・・・といったことも、どうすべきか悩んで決めたことではなくて、自然と次にはそうしたいとみんなで話していたことに手をつけていった結果生まれたことでした。そのための手段や方法を考えるときには、頭を悩ませることがたくさんあったけど、大きな道筋は悩む余地がない必然としてあったような気がします。
 
「ぼくのしょうらいのゆめ」は、内田裕也氏、大竹伸郎氏、田中泯氏、谷川俊太郎氏、吉本隆明氏、和田誠氏など、各界で活躍するそうそうたる著名人が、少年時代から今の自分までの道筋を語っている本です。そのタイトルか察すると、一線で活躍する方々の視点で、夢を抱くことの大切さを伝えようという意図で作られた本のように思えます。でも、そこに登場する方々の多くは、大きな夢に向かって努力をすることや、夢をあきらめないことの大切さを語ってはくれません。
 
「僕はなんとなく自分の意志で、『こうなろう』って思って『なった』ことは、どうも無いような気がします。もう『仕方がないからそうなっちゃったんだ』っていうすごく受け身の生き方をしてきた気がします。」
 
思想家の吉本隆明氏は、こんな風に語っています。下の画家の大竹伸郎氏の言葉と照らしあわせると、なんとなくその意味がしっくり入ってくるような気がする。
 
「『次を作る』という気持ちが消えないまま、どこまで行けるのかってことじゃないかな。それはもう『意志』の話じゃない。『描きたくてしょうがない』っていうのは『状態』で、それは『意志』とは違う。」
 
彼らが教えてくれることは、無理して大げさな夢を持つことではなく、日々向かい合うことを大切にし、自分の興味に忠実に本気で取り組んでいくこと。自然に生きて行った結果が、彼らの仕事への結果に繋がっていると語っています。そういえば少年時代は、夢を持つとかたいそうなコトを考えず、興味の赴くままに目の前のことに向かっていたんだよなあ。そんな少年の頃の気分を思い出させ、やさしく勇気を与えてくれる本です。