Marketing Lessons from Grateful Dead
ビジネス書やマーケティング論のようなものはあまり興味がないので自ら積極的に進んで読むことは少ないのですが、そのタイトルが気になり「グレートフル・デッドにマーケティングを学ぶ」を読んでみました。
グレイトフル・デッドはちょっと変わったバンドで1960年代のヒッピー、サイケデリックカルチャー全盛時代にアメリカでデビューし、大きなヒットがないにもかかわらず、熱狂的なファンにささえられライブバンドとして根強い人気を保ち続けています。
この本では、ライブの録音や撮影をフリーにしたり、会報などでファンとのコミュニティーを作ったり、ライブチケットを直接販売したりする手法を現在のインターネット時代のマーケティング手法と照らし合わせ、その先見性をたたえています。グレイトフルデッドの、業界の常識を打ち破り、自分たちのやり方を生み出し、それを貫き通す姿勢は素晴らしく、深く共感をします。しかし、そのことをマーケティング的な文脈で昨今のアメリカのネット企業の成功例とともに語られる箇所には、少し違和感を感じました。
レコードを売るための宣伝活動だったライブを、それだけできちんと儲かるようにしたのは、彼らがスタジオ録音よりも、ライブでもっともその本領が発揮できる音楽スタイルを持っていたからだし、ライブ録音をフリーにしたり、ファンとのコミュニケーションを大切にしていたのは、自分たちの音楽を愛してくれている人たちに真摯に向かいあった結果なのだと思います。
彼らはきっとマーケティング戦略なんて考えず、リスクや常識よりも、自分達の直感や感性に対して忠実に、そのやり方を選択していたのだと思います。それをマーケティングのための戦略としてとらえると違和感を感じてしまうのは、序文で糸井氏が言っているように、マーティングという言葉がどこか大衆操作的ものだと捉えられているからなのかもしれません。
一方で糸井氏は「こうなったらもっとおもしろい」というふうなひとりずつが楽しさに巻き込まれていく「創造的マーケティング」がここにあり、それが大衆操作的なマーケティングに一泡吹かせることができる・・・と語っています。創造的マーケティングは、マーティング論を踏襲ることではなく、自分たちの本質を見極め、時代とともにそれを磨き、最後には直感を信じて貫き通すことでしか生まれないのかもしれません。グレイトフルデッドがそうしたように。
話は変わりますが、3月23日(金)の夕方、トラベラーズノートと仲間たちのHP上で、4月に発売するあたらしい商品の情報をアップする予定です。ぜひ、チェックしてみてください。