2012年3月19日

旅の距離感


 
飛行機で羽田からソウルまでは2時間半くらい。同じ時間で、新幹線なら東京から大阪、車では高速を飛ばして沼津あたりまででしょうか。どこかへ旅をする時、飛行機、電車、車などさまざまな移動手段がありますが、飛行機より電車、特急よりも鈍行列車、というように、遅い方がよりその移動をダイレクトに体感できるような気がします。
 
大学生の頃。なんでそういうことになったのかは、すっかり忘れてしまいましたが、新宿から大学がある多摩地区まで歩いて行こうということになりました。なんとなく明るい昼間よりも、みんなが寝静まった夜の方がいいということで夜10時に新宿を出発友達4人、なぜか重たいギターやベースを持って甲州街道を歩きはじめました。
 
途中何度も公園で休みながら歩いたため、やっと多摩川の土手に着いたときには、夜が開ける直前の朝靄がかかる時間になってしまいました。携帯コンロでお湯をわかしてインスタントコーヒーを飲み、焚き火を前にギターをかき鳴らす。
 
どうしてこんなことをしているのだろう?そんなことを話しながら、朝日が出るまで土手で休みました。多摩川を過ぎればすぐだと思っていたのは、甘い考えで、もうすっかり明るくなってからの歩きはけっこう辛く、すでに動き始めた電車の誘惑に負けそうになりながらも、なんとか歩き、10時頃にやっと目的地の大学に着きました。
 
大学からの帰りは、いつものように電車です。12時間かけて歩いた距離は、わずか1時間で戻ってきてしまいました。電車の素晴らしさを再認識してみたり、ほぼ同じ距離を2時間ちょっとで走ってしまうマラソンランナーってすごいなあと思ったりもしました。
 
もう20年以上前の出来事です。去年の震災の日、電車が止まってしまい、恵比寿から歩いて帰ったとき、そのことを思い出しました。あの日、いつもは電車で1時間の距離を6時間かけて夜の道を歩いて帰りました。あまり意識していなかったその距離感が身にしみて分かった旅だったような気がします。
 

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