出合いの場
一度読んでみたけど、いまひとつしっくりこなかったり、よくわからなかった本が、時を経てから読んだら、はっきりとクリアに頭に入ってきて、面白く思えることがあります。
太宰治の「津軽」は、かなり前に読んでいて、正直言うとその時は、ちっとも面白いと思わなかったのですが、夏に実際に津軽を旅しながら読んだら、その情景がリアルに頭に浮かび、とても感動的な小説であることに気付きました。音楽でもそういうことはよくあって、例えば、映画で知っている曲がかかり、こんな素敵な曲だったんだと気付かされたり、お気に入りのアーティストがカバーしてその原曲を良さを再確認したり、なんてことは経験があると思います。それはまるで、いままでぜんぜん気に留めていなかった女の子が何かの拍子にふと見せた表情に、急に心がときめいてしまう瞬間に似ています。
要は自分の感受性は実に曖昧でその時の気分や状況次第で、受け取り方が変わってしまうようないい加減なものなのかもしれません。でもだからこそ、私たちお店では、自分達が作ったものでも、私たちが好きでおいてあるものでも、それに出合う方々にとっての最高のシーンを演出したいと思っています。そこまでの道のりは遠いですが、人とモノに愛情を持つことで少しでも近づければ嬉しいです。
モノとの出合いのなかで、最高のシーンのひとつは大切な人から受け取るギフトですね。その手助けができるのも、とても嬉しい仕事。トラベラーズノートやファクトリーで購入していただいたモノが誰かの思いを伝えるギフトになることができたら、こんな幸せなことはありません。
9月にトラベラーズファクトリーでイベントをやらせていただいた沼津の古書店、weekend booksさんでは、誰かに贈りたい本がテーマの企画展「A gift あの人に、この本を」を行っています。イベントをご縁にお声がけいただき、わたしも参加させていただきました。
私がある方に贈りたい本として選んだのは写真の本です。あわせて、相手への手紙がメッセージとして展示されています。お近くの方は、足を運んでいただけると嬉しいです。
weekend booksさんも、本に愛情を持ち、本との素敵な出合いの場を演出してくれるお店です。企画展もきっと、想いがこもった素敵な展示なんだろうな。