ささやかな旅の目的
ゴールデンウィーク。子供たちも大きくなってきて、部活だったり、勝手に遊んだりして、ゴールデンウィークだからといって、どっかに連れて行ってほしいなんて言われなくなり、特別予定はなかったのですが、あまりに天気が良くて、家でだらだらしているのもなんだかもったいと思い、前々から機会があればやろうと思っていたいくつかの目的を果たすため、ひとりで1泊の旅に出かけることにしました。
目的といっても、そんな大それたことではなくひとつは、お気に入りの靴のソールを張り替えてもらうために、それを手に入れた那須のお店まで行くこと。送ってしまえば済むことなんだけど、なんとなくわざわざそこまで行って直してもらいたいと思っている間に、ずいぶんとすり減ってしまっていました。もうひとつは、栃木にある大谷資料館に行くこと。ずっと行きたいと思っていたんだけど、震災以降営業を停止していて、それが4月に再オープンしたのを最近知り、気になっていました。
とりあえず、それらの目的以外は特別なことをしないで、本を読んで過ごそうと思い、じっくり読もうと思っていた本を2冊持って行きました。ちなみにその2冊は、井上ひさし氏の遺作となってしまった「一週間」と、村上春樹氏の新刊「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。どちらも時間を忘れるほど面白くて、あまりにも読むことに没頭してしまい、ノートの何かを書き留めるという、もうひとつあった目的を果たすことができなかったのですが、これは言い訳かもしれません。
大谷資料館は、期待通りの場所でした。地下に降りると、気温がぐっと下がり冷たい空気に包まれ、削り取られた石に囲まれた巨大な地下空間が現れます。もともとは、見せることを目的に作られた空間ではなく、石を採掘した跡なのですが途方もない数の人間の力と時間によって作られた神殿の内部のようで、暗闇と地上から差し込んで来る太陽の光や照明とのコントラストが美しく、神秘的な感覚を与えてくれました。
あとは目的の靴を預けてしまうと、特別なことはせずに、移動中の電車だったり、バスを待ちながらだったり、カフェだったり、場所はさまざまですが、ずっと本を読んでいました。たまには、そんな旅もいいものです。