2015年1月26日

Deep Blue Days

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最近ふと気が付くと身に付けるものが青いものばかりになっているような気がするのです。以前は、赤や茶色などの暖色系の服の方が多かったような気がするのですが、年をとって好みが変わったのか、流行りなのかよく分からないけど、自然と青や紺ばかり選んでしまいます。
 
青といっても、明るい鮮やかな青ではなく、インクで言うとブルーブラックの濃い青。インディゴブルーや藍染めのような深い青が好きで、去年AIR ROOM PRODUCTSさんに作ってもらったトラベラーズシャツもそんな色でした。そういえば、トラベラーズノートの地球が描かれたロゴの色もそうですね。雲一つない晴れた空のような明るい青ではなく、夜が明ける直前のうっすらと光が差し込もうとしている紺碧の空の青。
 
明るい鮮やかな青は、まさに青春というような、若さや未熟さ、それ故の瑞々しい青臭さを連想させるんだけど、深い青は、その先にある憂いや孤独、静寂、洗練、永遠などを感じさせてくれます。
 
例えば、ジョニ・ミッチェルが1971年にリリースしたアルバム『Blue』。そのジャケットの暗い夜を思わせる濃紺に薄い光が差し込むような青から感じるのは、孤独や絶望の中に灯されたささやかな希望。アルバムに収められた曲もまた同じトーンに包まれています。ジャズの名盤として名高いマイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』のジャケットも深い青。深い青には、このアルバムの演奏のように無駄をそぎ落としたことで産まれる洗練を感じます。
 
青の時代に描かれたピカソの自画像に漂う憂いと強い決意。宇宙から撮影された青い地球や、深海に潜るダイバーが撮影した海の青から感じる壮大な美しさと優しさ。フランスの芸術家、イヴ・クラインは、最も理想的な高貴の色として「インターナショナル・クライン・ブルー」という深い青色を自ら発明し、以降その色しか使わなかったそうです。彼によると、青は無限の宇宙へ誘ってくれる深い精神性が満ちた色とのこと。ブルース、ブルーノート、ブルークリスマス、ブルーバード、グランブルー、ブルートレイン、ブルーチーズ、ブルーサンダー、ブルーハーツなどなど、青のイメージはどんどん広がっていきます。
 
もちろん、青いシャツや濃紺のセーターを買う時にそんなことを考えていた訳ではないし、好きであることの背景に深遠なメッセージが隠れているなんて、これっぽっちも思わないけど、ひとつの色について、いろいろ考察してみるとあたらしい発見があって楽しかったりします。
 

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