2015年3月 2日

ビジネスとなりわい

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2月は、新しいプロダクトの準備で忙しい日々が続きましたが、そんな中、香港からパトリックがやってきたのを筆頭に、タイとオランダからお客さんが来日し、それぞれ久しぶりにゆっくり飲みながら話をする機会がありました。さらに、トラベラーズファクトリーのイベントの打ち上げで、G.F.G.S.さん、KO'DA STYLEさんにAIR ROOM PRODUCTSさん、加えて、素敵な自転車屋さんや石鹸屋さんとも一緒に飲んで話す機会があって、いつになく飲み会の多い一ケ月となりました。
 
それぞれの仕事に向かい合う姿勢やものづくりの考え方に共感するところが多く、楽しい時間を過ごすことができたし、同時に自分達の立ち位置を再確認することもできました。みんなに共通していたのが、自分たちが良いと思えることや好きな世界を本気で追求していて、そのことに真摯かつ楽しく取り組んでいること。もちろん仕事だから儲けることも大事だけど、それは生きていくための糧のようなもので、一番大事なのは、いかに自分たちの世界を追求していくかということ。
 
最近、ぼくらの仕事をビジネスという言葉で括られることにちょっとした違和感を感じていて、それよりも「なりわい」としてノート屋をやっていると言った方がしっくりくるのです。
 
「なりわい」は、単なる作業でも利潤追求でもない、生計を立てていくための地に足がついた仕事で、家業のような小さな規模感の、人の手が丁寧にかけられた血が通った仕事であることを感じます。先ほどあげた人達も、一人か家業のような気心が知れた信頼できるチームで仕事しています。そんなやり方は、急激に成長するのは難しいけど、創意工夫や、共感できる仲間が少しずつ増えていき、さまざまな形で繋がっていくことで、ゆっくりと成長することはできます。
 
最近はインターネットなどのおかげで、小さな規模でも情報が世界中に発信できるようになったから、そんな小さなチームが作り上げたものも海外の人の目にとまるチャンスがあります。トラベラーズノートだって、そうやって見つけて、愛情を持って使っていたり、販売してくれたりする仲間たちのおかげで、少しずつ海外において知られるようになってきたし、そんな仲間と話すのはやっぱり嬉しいし、楽しい。
 
利潤追求のための大量生産と販路拡大を目指したいわゆるグローバルビジネスと違った、強い意志を持った小さな規模のチームによって手作りに近い形で作られたモノやコトが、世界中の同じ想いを共有する人たちに広がりネットワークを作っていく、言うならばグローバルな「なりわい」のようなやり方がきっとぼくらの目指す方向のような気がします。
  
タイからのお客さんは、トラベラーズノートのカバーを作るチェンマイの工房のオーナーだったのですが、彼らが言った言葉が印象的でした。

「トラベラーズノートが世界に広がっていくのは嬉しいし、注文に応えられるようにがんばるけど、あんまり仕事が増えてしまうと忙しくなりすぎて、ハッピーじゃなくなってしまうから、ゆっくりやっていって欲しいな」 
 
その言葉を聞いて、ぼくはますますこの人たちが好きになり、きっとそんな人が作っているからこそ、トラベラーズノートには自由で優しい空気が漂っているんだと確信しました。