2016年5月30日

100分の1の奇跡

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トラベラーズノートは、なんとも不思議なノートだと思う。書くという行為を満たすためだったら、もっと安いノートはたくさんあるし、革は個体差もあって、傷が目立つし、その経年変化の味わいだって、単に古ぼけて汚くなったと思う人だって多いと思う。
 
だけど、ぼくは、使うたびに増える革の傷をとても愛おしく思うし、このノートが醸し出すなんとも言えない温かさが好きだ。ずっと字が汚いことにちょっとしたコンプレックスを持っていたのだけど、トラベラーズノートに書いた時に、汚い字が、なんだか味があっていいなと思えたことがあって、その懐の深さに感動した。
 
ぼくは、このノートを使うようになってから、それまでより自由に文章や絵を描くことができるようになり、そのことがぼくの仕事や生活に大きな変化をもたらしてくれた。トラベラーズノートは、いろいろな欠点すらも魅力に変えてしまう不思議な力があって、ぼくはそんなところがとても好きだ。

ただ、このトラベラーズノートの特徴が、決して世の中のすべての人に受け入れられるようなモノだとは思わない。一度使ってみたけど、やっぱり合わないなと思う人もけっこういるだろうし、そもそもこんな変わったノートを使おうとすら考えない人の方が多いはずだ。パンクロックの激しいリズムを騒々しくて不快だと感じる人が多いように、トラベラーズノートは、限定された一部の人の感性にだけ訴えるようなモノだと思っている。たぶん、気に入ってくれる人は、100人いれば1人くらいしかいないのかもしれない。だけど、ぼくらが好きで作っていきたいのは、そんなノートなので、それはそれでしょうがないことなのだ。
 
ぼくらは、その割合を無理に増やすことは考えず、奇跡的な確率で巡り会えた100分の1の人たちを大切にし、もっと気に入ってもらえるように、ずっと好きであり続けてもらえるように、その世界を追求していきたいと考えている。そんな考えだから、きっといつまでたってもぼくらの作るモノは、メインストリームにはなれないのだろうけど、むしろインディーズであり続けるほうが、ぼくららしいと思っている。
 
革や紙、カスタマイズ、旅が好きで、このノートが持つ不思議な魅力に共感をしてくれる人たち。もしかしたら100分の1がゆえに、ちょっとした孤独感や、今いる場所に居心地の悪さを感じている人もいるかもしれない。そんな100分の1の人たちがトラベラーズノートという共通する価値観を通じて、繋がり、広がる。
 
そういえば、ぼくらもそうだったんだよなあ。トラベラーズノートを手にして旅をすることで、料理人やコーヒー屋、モノづくりの人たち、ユーザーの方々と繋がり、仕事や生活が広がっていった。巡り会えたみんなから、ぼくらの基地となるトラベラーズファクトリーを作る力をもらった。トラベラーズファクトリーができてからは、さらに多くの人たちと出会うことができた。この場所で、愛情とともに、ノートの魅力伝えていくことを仕事にするスタッフたちにも出会うこともできた。ぼくらの知らない場所で、その魅力を伝えてくれるユーザーの方々もたくさんいる。
 
そうやってトラベラーズノートは、100分の1の密度を変えることではなく、新たな100分の1と出会うことで広がっていくことができた。
 
でも、今はまだお互いに気付いていないだけで、いつか深く心を通じあうことができる新しい仲間が、きっとこの世界にはまだまだたくさんいるはず。熱量を上げて、感度を研ぎ澄ましていくことで今よりもノートを魅力を高めていき、そして、同じ思いを共有する仲間たちとともに本気で伝えていけば、いつかきっと出会うことができるはずだ。そんな仲間たちが世界中で繋がることで、ぼくらが住むこの世界が、少しでも居心地の良い場所になれば嬉しいな。
 
話が変わりますが、今度の週末、6月4日(土)に西荻窪で開催するイベント、西荻茶散歩にてスパイラルリングノートバイキングを行います。
 
以前、ファクトリーで家Tシャツワークショップを開催してきれたSTOREさんのショップにて行います。ぼくらも初参加のイベントで、あたらしい出会いへの期待に今からワクワクしています。オリジナルの表紙も登場しますのでぜひ遊びに来てください。