つながるということ
先日、打ち合わせのために久しぶりに谷中のtokyobikeさんへ行った。打ち合わせと言っても、何か楽しいことを一緒にできないかと相談しながらも、話は脱線するし、急ぐようなことでもないのでなかなか具体的には進まない。それでもお互いの考え方に共感する部分も多く、久しぶりにそれを確認しあうだけでも意義深くて楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
tokyobikeは、高機能のプロ仕様自転車ではなく、日常の中で、気軽に気持ち良く走ることを大切に丁寧に作られている。もっと安い自転車は他にもたくさんあるけど、決してマニア向けの高級品でもない。自転車業界ではちょっとニッチな世界で、でもそんなところが愛されて、世界中でファンが増えてきている。ACE HOTELとコラボレーションをしていたりもするし、お話をしながら、自転車とノートとまったく違う世界ながら、その立ち位置みたいはものかがトラベラーズノートととても似ていると思った。
打ち合わせが終わると、当然のように場所を社長の行きつけのお店に移して飲み会となった。今に至るまでの流れ、海外での展開、ものづくりのことなど、話は楽しく尽きることがない。
「仮面をつけて生きるのは息苦しくてしょうがない。どこでもいつでも誰とでも笑顔でなんかいられない」
ブルーハーツのマーシーがそう歌っているように昔は仕事をすることは、無理をして笑顔を作ることだと思っていたこともあったけど、トラベラーズノートができてからは、そんなことはほとんどなくなった。
僕らが最初にトラベラーズノートを作る時に、なにより大切にしたいと思ったのは、それが、自分たち自身が本当に使いたいものであり、好きなものでありたい、ということだった。トラベラーズノートが生まれて何年かすると、小説家が生み出した登場人物が一人歩きしていくように、このノート自身が一つの人格を持つようになり、僕らはその人格と相談したり、時には導かれながら、その世界を広げていった。だけど、その時にやっぱり大切なのは、僕ら自身が使いたいものであり、好きなものであるということだった。
するといつの間にか、僕らの周りには、その仕事を尊敬し、考え方に共感できる大好きな仲間たちがたくさん増えていき、仕事はさらに楽しくなっていった。トラベラーズノートが僕らの仮面を外し、本音で語り合うことの大切さを教えてくれたのだ。共感できる仲間たちとつながることで、もっと世界は楽しく、素晴らしいものになる。
いつでもどこでも誰とでも笑顔でいる必要なんてないし、それよりも心からの笑顔になれる人とつながることの方が大事。ブルーハーツを聴きながら、ひとりでうじうじしていた昔の自分には想像できなかったけど、今、そんな風に思えるなら、年をとることも決して悪いことじゃないのかもしれないな。
tokyobikeさんでは、最近谷中にレンタル専門のショップをオープンしていて、旅に来た人たちも気軽にtokyobikeで東京を走ることができます。東京の旅のプランとしては、ぜひおすすめです。