2017年3月 6日

TRAVELER'S TRAIN

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トラベラーズトレインと呼ばれる列車がどこかにあるらしい。それはトラベラーズステーションから不定期に出発する寝台夜行列車なんだけど、時刻表には載っていないので、いつどこへ向かって出発するのかは誰もはっきり分からない。蒸気機関車が引っ張るから、速度はずいぶんゆっくりで、一度乗車する何度も車内で夜を過ごさないとならないようだ。だけど、古い木造列車をカスタマイズして作られた客車は、不思議に居心地が良くてそれも苦にならない。
 
歩くとミシミシと音が鳴る木の床は、毎日丁寧に磨かれているから美しく黒光りしているし、革張りのシートは、たくさんの人の重みを受け止めてきた歴史を感じる。シートは、夜になり乗務員がシートを倒してシーツをかけてくれると、快適なベッドになる。
 
食堂車に足を運べば、丁寧に作られた素朴でおいしい食事がいただける。トラベラーズブレッドと呼ばれるナンのようなパンが主食で、そこに肉団子やカレー、蜂蜜などをのせてその日の気分でカスタマイズして食べる、異国情緒を感じさせるのに、どこか懐かしい味がする料理だ。材料は途中の駅で仕入れているから新鮮だし、旅情を感じることもできる。大きめのマグで出されるコーヒー、トラベラーズブレンドを飲みながら、みんなゆっくり食事を楽しんでいる。
 
トラベラーズトレインには、コンテナのような貨物列車が連結されていて、普段は荷物を運んでいるんだけど、途中の駅で荷物がおろされて空になると、ライブなどのイベントを開催してくれる。アコースティックギターの弾き語りやハープの演奏、変わったところではノートを作るイベントなどさまざまな催しが行われていて、乗客はそれをけっこう楽しみにしている。
 
また、荷物を積んでいる時には、かなりの確率で無賃乗車の旅人がそこに潜んでいるらしいけど、どうも車掌はそれを黙認しているらしい。本をたくさん積んだライブラリー車両もあって、乗客は自由に本を読むことができるし、そこで誰かに手紙を書いたり、ノートに何かを書き込んだりしながら思い思いに旅の時間を楽しんでいるようだ。
 
乗客はどこに向かって走っているのか、いつ目的地に着くのか、よく分かっていない。車窓からの風景は、毎日同じ場所を巡っているようにも見えるし、はじめて見る景色のようにも見える。時には、海上を一直線に走っていたり、星空に囲まれた宇宙空間を走ることもある、そんなことがまことしやかに乗客の間で話されている。
 
トラベラーズトレインの切符は、今ではちょっと珍しい厚い紙に活版で印刷された硬券の切符で、席に着くとカイゼル髭をはやした不思議な風貌の車掌がパチンとハサミを入れてくれる。だけど、この切符をどうやって手に入れることができるのかは、誰も知らない。そこにはもちろん行き先も書かれていないけど、乗客は、旅を続けていくうちに、降りるべき駅を自然と見つけるらしい。
やるべきこと、会うべき人、帰るべき場所がふと頭に浮かびその駅に着くと、列車はホームに停車し、ひっそりと乗客をおろしてくれる。
 
トラベラーズトレインについての噂はいろいろあるみたいだけど、鉄道年鑑には記録がないし、鉄道雑誌で特集されることもないので、詳しいことは誰も知らない。
 
話変わって、10周年記念キャンペーンのポストカード、世界中からたくさん届いています。少しずつ目を通していますが、温かいメッセージがたくさんで、トラベラーズノートが多くの方々に愛されているのをあらためて実感しています。現在集計中ですので、抽選と賞品の発送まではしばらくお待ちください。
 
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