2017年7月31日

香港の古いビルを巡る

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香港の風景として思い出すのは、ビル群だ。夜には美しい夜景を演出するシーサイドの巨大高層ビルから、今にも壁が崩れ落ちそうな下町の古いビルまで、街中のいたる所で見られるビル群が香港の風景を作っている。
 
中国の小さな漁村に過ぎなかったこの場所が、アヘン戦争によってイギリスの植民地となり、その後、辛亥革命から中国の共産主義政権の設立、文化大革命などの影響で、多くの人たちが中国からこの決して広くない地域に流入してきたことで、人口が爆発的に増えていき、さらに自由貿易港として経済が発展し国際都市になってきた歴史を建ち並ぶビル群から感じることができる。香港では、そんな歴史の証となるような有名なビルがいくつもある。僕が香港をはじめて訪れた時に泊まった重慶大厦もそのひとつ。
 
繁華街の中心にあるこのビルの中には、たくさんの安宿に、インド料理店やインド音楽を流すCD屋、両替商に携帯屋などが並び、さらにインドに、中東アジア、アフリカに欧米からやってきたたくさんの旅人が歩くことで、独特の混沌とした怪しい雰囲気をかもしだしている。さすがに最近はここに泊まることはないけど、近くを通ると今でも中をのぞいてみたくなる場所でもある。

今回の香港出張では他にもたくさんある名物ビルのいくつかをパトリックが案内してくれた。南山邨は、1970年に建てられた公共住宅。生鮮食品や日用雑貨が売られている店が並ぶ1階2階を抜けると、上階の住居エリアが見える広場に出る。美しい幾何学模様のように規則正しく窓には、所々に物干し竿や手すりに架けられた布団が見えて、そこに住む人たちの暮らしを感じさせてくれる。夕方、穏やかな風が流れるなかで、そこに住んでいると思われる年寄りが静かにベンチに座っているのを見ると、人が密集した場所なのに懐かしい田舎にいるような気分になった。
 
さらに、Quarry Bay にあるビル群はすごかった。ここにある高層ビル、益昌大廈は、何層にも建て増しされて積み重なり、塊となってそびえ立つ要塞のようなビルだ。映画やミュージックビデオの舞台にもなっていて、ビルに囲まれた中庭から眺める景色は圧巻。昔読んだ藤子不二雄Ⓐの漫画に出てきた、今はなき九龍城のイメージそのものだった。この漫画は、絶対に近づいてはいけないと言われていた九龍城に興味本位に足を運んだ日本人観光客がおぞましい理由で殺されてしまうという話で、恐怖とともにそのイメージが僕の頭にインプットされていた。
 
パトリックが先導するなかで、探検するようにビルの中に入り、屋上まで行ってきたんだけど、そこから見下ろした光景もまた大迫力だった。写真を載せているけど、夜にiPhoneで撮った写真では、いまひとつその迫力が伝わらないと思うので、ぜひ興味のある方は、Yick Cheong Buildings で画像検索してみてください。
 
これらのビルはすべて今も現役で使われていて、人も住んでいる。実際にそこを訪れてみると、そこでも暮らしは不便なことも多いかもしれないけど、きれいなだけの新しいビルより、人との繋がりや歴史の味わいを感じることができて、快適なのかもしれないと思えてくる。また、古いビルを利用した若いアーティストのためのギャラリーやゲストハウスもある。
 
東京の長屋が並ぶ下町の風景もそうだけど、いつまでもきちんと生きている古い建物が残っていてほしいと思うのは、旅行者の勝手な願いなのだろうか。皆さんも香港を訪れた際は、ぜひ古いビル巡りをしてみてはいかがでしょうか。スターフェリーにトラム、さらにミスターソフティーとともにおすすめですよ。
 
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