2017年、夏の旅
青春18切符で岡山に着き、安ホテルで夜を明かすと、翌日の朝、再び岡山駅に向かった。駅前の噴水には朝の日差しが照りつけていて、そこに薄っすらと虹が見えた。早朝出発した新幹線に深夜バス、さらに実家のある京都から車でやってきた3人に加え、たまたま大阪に来ていたチェンマイの友人が岡山駅に集まる。昨日までの鈍行列車の一人旅とは打って変わって、この日はトラベラーズチームでの旅。早速みんなで車に乗り込んだ。
夏休みがはじまる直前に、急遽この日に岡山に集まることが決まった。会いたい人に見ておきたい場所があるけど、ちょっと行きづらいし、すぐに行かなきゃいけない理由があるわけでもない。だけど、誰かがそこに行こうと言い出して、予定や都合に想い、みんなの旅の高揚感が合致すると、それぞれの個人的事情をちょっと横に置き、そこに行くことが必然になって、旅がはじまる。久々のトラベラーズチームらしい旅のはじまりに僕もわくわくしていた。
賑やかな駅を離れて静かな山奥をしばらく車で進んでいくと、目的地に着いた。Superior Laborというブランドのオーナー、河合さんに初めて会ったのは、先月香港で開催されたLOG-ONでのイベントだった。プロダクトはもちろん、ものづくりに対する姿勢に興味を持ち、話をすると、岡山の山奥にある廃校を買い取って、そこを工房にしていたり、さらに、敷地内にはカフェや自分たちの住まいがあるのを聞いていつか訪れたいと思っていた。
実際に訪れてみると、想像通りの素敵な場所だった。終戦直後に分校として建てられて廃校となった木造平屋をリノベーションして作られた工房に入ると年代物のミシンや革加工の機械が並んでいる。作りたいものがあると、機械を手に入れ試行錯誤をしながら自分たちで作る。効率性やコストを追求するのではなく、かといって高級な1点ものでもなく、自分たちの生業として誇りを持って楽しみながら世界に通じる良いものを作ろうとする。これからの日本のものづくりが目指す在り方を感じ共感するとともに、それを素敵に体現している姿に羨ましさも感じた。
工房を見学した後は、敷地内にあるカフェで異国の匂いを感じる食べ物をいただきながら、一緒に何かしたいですねといろいろな話をした。話は尽きなかったけど、次の場所に移動する時間となり、東京での再会を約束して別れた。
その後、倉敷の街を見てから京都へ向かう。京都では、恵文社一乗寺店の店長だった堀部さんが2年前にオープンした誠光社に行って、久しぶりに堀部さんと話をしたり、おなじみのエレファントファクトリーコーヒーやかもがわカフェで美味しいコーヒーを飲んだり、下鴨神社で開催していた古本市を覗いたりして過ごした。京都は、トラベラーズのイベントを東京以外で最も開催してきた場所だし、馴染みのお店もいくつかある。ここに来ると、また帰ってきたなと思えるし、トラベラーズにとって大切なことを思い出させてくれる特別な場所だ。
京都でみんなと別れて再び青春18切符の一人旅。帰りは名古屋で一泊して、ゆっくり東京へ向かった。これが、2017年の夏の旅だ。東京に帰ると激しい雨が降っていた。久しぶりに見たテレビのニュースでは、何十年ぶりかで8月に連続16日間雨が続いていると言っていた。今年は秋が早めにやってくるのかもしれないな。