2017年10月30日

ニコル・アペル氏の絵を見て思ったこと

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すでにサイトにアップしているように、11月に Ace Hotel の LA とニューヨークでトラベラーズカンパニーキャラバンを開催するのだけれど、今回もイベントとあわせて Ace Hotel とのコラボレーションアイテムを作っている。

リフィルは昨年に続きニューヨークにあるLand Galleryに所属するアーティストの作品を使わせていただいている。Land Galleryは、幼少時から障害を抱えた人達にアートの才能を元にライフスキルを与えようと活動している非営利団体のギャラリーで、現在16名のアーティストが所属している。今回はその中のひとり、ニコル・アペル氏の二つの作品を元にリフィルを作っている。
 
ひとつは、アメリカのロードサイドによくあるガソリンスタンドの看板やポンプが画面いっぱいに並ぶ「ガスポンプ」という作品。二つ目は、オイルサーディンの缶詰のラベルに混ざり、往年のボクシング試合のポスターやチケットが並ぶ「サーディン&ボクサー」。ポスターの中には、ボクシングに詳しくない僕でも聞いたことがある、モハメド・アリが王者ジョージ・フォアマンを劇的なKOで破り、キンシャサの奇跡と呼ばれた試合のものある。
  
彼女の絵に、鳥や爬虫類、猛獣などの目の部分だけを切り取ったものと、ロシアの民芸品の箱が並ぶ不思議な絵がある。これは、眼科医をしているロシア出身の母親のために描いたそうだ。もちろん絵を見る者に、そのつながりなんて理解できないから、不思議なモチーフの組み合わせに、様々なイメージが頭に広がっていく。
 
今回のリフィルの絵に描かれているガスポンプにボクサーとオイルサーディンは、日本人の僕らにとって、古い映画に出てくるようなアメリカの日常の暮らしを懐かしさとともに感じさせてくれるモチーフだ。絵を眺めていると、それらを愛するアメリカ人のソウルのようなものが伝わってくる。そして同時に、自然と高揚感が沸き起こってくる。そうだ、好きなものを好きなように描けばいいんだ。自由でのびのびしていながら、詳細まで丁寧に描き込まれている絵には、その対象に対する愛情や興味、敬意が溢れている。
 
それに気づいて、無性に絵を描きたくなった。小さい頃、僕はよくひとりで家でノートに絵を描いていた。例えば、恐竜が好きだった頃は、何ページも図鑑から恐竜を描き写していたり、ソニーや東芝など家中にある電気製品のロゴを書き写したりしていた。きっと好きなものを無心に描いていくのが純粋に楽しかったんだろうな。ニコル・アペル氏の絵は、あの頃抱いていたただ純粋に表現したいという気持ちをもう一度思い出させてくれて、見る者にそれを掻き立ててくれるような気がした。
 
小学生の頃によく描いていた恐竜をノートに描いてみた。あの頃は、恐竜のことが大好きで暇さえあれば図鑑を眺めて、その特徴を調べ、彼らが生きて動いていた世界をいつも想像していた。そんなことはすっかり忘れてしまった今の僕が描いた恐竜の絵は、ぼんやりした記憶の中にあるあの頃の絵と比べて、あんまりいい出来だとは思えなかった。だけどその分、絵を描いたり、表現したり、作ったりする時のヒントをちょっとだけ教えてもらったような気がした。
 
Ace Hotel とのコラボレーションアイテムは、日本では12月6日より、トラベラーズファクトリー各店で販売します。よろしくお願いします。僕もこのリフィルに何を描こうか、今から楽しみです。
 
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