2017年11月 6日

好きこそ物の上手なれ

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先週トラベラーズファクトリーで開催したROSSO展に参加いただいたステンドグラス作家「n on make」こと小林さんの作品に昭和プロレスと名付けられたブローチがあった。その名前の由来は、プロレス好きの小林さんがかつてBI砲と呼ばれ、日本のプロレスの基礎を作った二人、ジャイアント馬場とアントニオ猪木のタイツをモチーフに作ったから。一見すると、ちょっといびつなホームベース型の赤と黒のブローチなんだけど、馬場と猪木が並ぶ写真と一緒に見ると、馬場の赤は少し丈が長かったり、けっこうリアルに作られていて、もうプロレスのタイツにしか見えなくなってしまう。でも、おしゃれな女性が普通に付ければ、抽象的なデザインの素敵なブローチに見える。
 
プロレス好きはもちろん、そうでない人もそんな楽しい仕掛けを聞くと、思わず笑顔になりたくさんの方が手に取ってくれていた。ブローチの裏の部分を改造したら、プロレス好きの方にぴったりのトラベラーズノートのチャームになりそうだ。
 
付加価値という言い方は、取って付けたような価値みたいで、あんまり好きではないけれど、モノの背後にある意味や物語が、使い手の思入れや深い愛着を生むことはとてもよく分かるし、実際、僕自身もそういうものに囲まれて暮らしていたいと思っている。例えばトラベラーズファクトリーやイベントで皆さんのトラベラーズノートを見せてもらうと、そこに付けられたチャームや表紙に貼ったステッカー、ざっくり挟んだ紙片が、その持ち主にとって特別な意味を持つことが多い。
 
それは自分の好きなコトやモノを示してたり、思い出の場所で手にしたものだったり、大切な人からもらったものだったり、自分で一生懸命作ったものだったりする。ダイレクトにそれが伝わる場合もあるし、まるで自分だけに分かる秘密の暗号みたいにさりげなく示していることもある。トラベラーズノートに大切な何かを付けたり、挟んだりして、毎日共に過ごすことで、自分にとっての大事なことについて、深く考えたり、感じたりすることは自分の暮らしを豊かにしてくれることだと思う。
 
毎日の暮らしは、一見何でもないような些細な出来事を繰り返しながら過ぎていく。それをただやり過ごして生きていくこともできるけど、そこから何を感じとれるかが大事。例えば、ふとどこかで流れた音楽に心が揺れたら、その音楽の曲名を調べて、CDを探してみたり、自分と趣味が合う友人が話の中で映画をすすめたら、時間と作って見に行ったりする。さらに、そのアーティストの他のアルバムを聴いたりその映画の監督が影響を受けた映画を見たりすると、どうして感動したのか、どうして好きなのか、自分はどんなものが好きなのかが分かってくる。
 
そして、それをトラベラーズノートに書いたり、挟んだり、付けたりしながら、自分の中に蓄えていく。それらは、毎日の生活ではあまり役に立たないかもしれないけど、出汁をとるための昆布と鰹節みたいにじんわりと味わいを加え、化学調味料にはない深みを毎日に与えてくれる。
 
映画愛に溢れた監督によるマニアックなオマージュが詰まった映画は、気づかれることを目的にしているのではなく、純粋な愛情表現であり、そのオマージュに気づかなくても、自然と溢れる愛情と深みを感じることができる。でも、ある時ふとオマージュに気付いたことで、その映画への理解がさらに深まるように、ふとしたきっかけで何かと何かがリンクして日々の生活や仕事のなかで大きな喜びや創造を生み出すことがある。好きである何かにアイデアや勇気を与えられたり、救われたりすることもたくさんある。
  
自分が好きなものについて笑顔で語る姿は美しいし、その共感によって深いコミュニケーションが生まれる。一方嫌いなことを語ったり、グチを聞いたりするのは、楽しい時間ではないし、あまり建設的なことを生み出さないような気がする。もちろん時には、そういったことも必要だけどやっぱりそれ以上に好きなことについて語り合いたい。そういえば、ROSSO展の打ち上げでは、お互い好きなことについて語りあえて楽しかったな。素敵な仕事をしていたり、素敵なモノを作る人は、好きなことをたくさん蓄えている。もっともっと好きな何かをトラベラーズノートに記していきたいな。
 
今週は、いよいよ USA キャラバンです。僕らも好きなAce Hotel でのイベント。同じ好きという価値観を、国境を越えて共有できるのが楽しみです。
 
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