2017年12月11日

スパイラルリングノートバイキングのこと

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年末年始に企業名や店名が入ったカレンダーやダイアリーをもらったりすることってないですか。どちらも使っていれば、いつも目につくところにあるものなので、何か用があった時には、その名前をすぐに思い出してもらえるから、かつてはタオルやてぬぐいとともに会社やお店の年末年始ギフトの定番だった。
 
最近は、年末年始にお得意様へ挨拶まわりをするなんてことも少なくなったし、企業でもこの手の販促費用が削減されるようになったのと合わせて、ダイアリーは個人的な好みが多様化し、貰うのではなく自分で選んで買う方が主流になり、最盛期と比べると需要はだいぶ少なくなってきた。それでも、うちの会社では今も企業名を名入れした販促用のダイアリーをけっこう作っている。
 
デザインフィルは、この企業の販促用ダイアリーの製造には、50年以上の長い歴史があり、サイズは手帳型にA5やB5、さらに製本方法も糸かがり製本からリング綴じまでたくさんのライアップがある。リング綴じのダイアリーは、手でリングを綴じているので、少ない数でも作りやすいことが特徴であり利点でもあった。例えば、ダイアリーの1枚目に会社の写真を印刷したページを入れて、最後のページには各支店の住所が入ったリストを入れるなんてことが、糸かがり製本のダイアリーよりも少ない数で簡単にできるのだ。
 
販促用ダイアリーの売り上げがピークだった頃は、年末が近づくと、よく全社スタッフ総出でダイアリーのセットを手伝っていた。会議室に集まって、企業名が箔押しされたビニールのカバーを挿したり、のし掛けをしたりして、なんとか納期に間に合うように作業をしていた。例えば、最後のページに校正ミスが見つかるなんて事態が発生すると、糸かがり製本のものはすべて作り直しをしないといけないのだけど、リング綴じは、一度リングを外して、新た印刷したページだけを差し替えれば、他のページはすべて活かすことができる。そんなこともリング綴じのメリットだった。
 
リングを綴じる作業は、手作業とはいえ、ちょっとしたコツが必要で、熟練したスタッフでないとできなかった。手伝ってみようと見よう見まねでリングを綴じても素人が綴じたものはリングの並びが汚かったり、ページがめくりにくかったりして、「こんなの使えないよ」と一蹴されてしまう。上手は人は、ささっと素早い手さばきで、きれいにリングを綴じて、横で見ていてもほれぼれとした。
 
スパイラルリングノートの原型はこのリング綴じのダイアリーで、トラベラーズカンパニーのラインアップに加えた理由には、長い間この会社で受け継がれてきた技術や経験を形にしたかったという想いもあった。もちろん、スパイラルリングノートもすべて手作業でリングを綴じて作られている。そして、スパイラルリングノートバイキングというイベントが生まれたのは、それをさらに多くの人たちと共有したいという想いからだ。
 
デザインフィル流山工場では、毎日たくさんのノートや便箋を作っているから当然紙もたくさんある。指定通りの色に印刷するためには、何枚も紙を余計に必要とするし、さらに製本時の不良なども想定すると、実際に製品になることなく廃棄されてしまう紙も多い。それらはきちんとした製品を作るためには必要なものではあるけど、当然現場のスタッフは、捨ててしまう紙を有効に使えたらいいな、と思っていた。
 
ある日、そんな廃棄する予定の紙をスパイラルリングノートのサイズに断裁して並べて、みんなで好きな紙を選んでノートを作ったら楽しそうだなと考えたのは、トラベラーズチームで本社と工場を行き来しながら生産管理を担当している石井だった。

工場で社内イベントをすることになった時に、実際に試してみることにした。思い付いたらまずは自分たちでやってみるというのが僕らの信条だ。流山工場にはスタッフのための大きな食堂があるので、そこを借りてやることにした。すると、食堂だったら、昔から使っているお皿に紙を並べてバイキングみたいトレイを持って選んだら楽しそうだという話しになり、ノートバイキングという名前が生まれた。
 
バイキングって決して高級なものではないけれど、ずらりと並んだ料理から、好きな食べ物を好きなだけ選ぶのって、ちょっとワクワクしますよね。紙を選ぶワクワク感が、バイキングと言う名前を付けることで、より大きくなった気がした。そして実際にやってみると、仕事で紙を見慣れているはずのみんなが笑顔でノート作りを楽しんでくれた。
 
トラベラーズファクトリーができた6年前、一番最初に開催されたイベントがこのスパイラルリングノートバイキングだったのは必然だった。流山工場の食堂が始まりだったから、その後もイベントで使っている紙を載せるメラミン製の皿と、紙をピックアップするためのアルミのトレイは、実際に流山工場で何十年も前から使っていたものを使っている。最初は紙を取るためにトングも用意したけれど、これはあまりにも取りずらかったのでやめた。
 
僕らは、ノートバイキング用の紙を用意する時、MD用紙のような定番の紙はご飯、柄が印刷された紙や色紙はおかず、さらにカンガルーポケットやミツバチ封筒のように最後に添える紙は、デザートと表現し、例えば、どこのイベントではご飯がちょっと足りなかったね、なんて言ったりする。
 
そんな風にしてはじまったノートバイキングが、2014年には金沢、奈良、徳島、広島と日本各地をキャラバンして開催し、さらに2015年のヨーロッパのアムステルダムを皮切りに、ロンドン、ベルリン、そして昨年には台北、香港、上海のアジア三都市、今年はニューヨークにロサンゼルスと世界各地で行われ、たくさんの人たちが笑顔で参加してくれていることを思うと、とても感慨深い。
 
そして、今週12月15日、16日、1年ぶりにトラベラーズファクトリー中目黒でスパイラルリングノートバイキングを開催します。世界中で開催したこのイベントですが、やっぱりトラベラーズファクトリーが一番似合います。僕らもホームに帰ってきた気分です。
 
今回はトラベラーズファクトリー6周年記念のオリジナルデザインの表紙もご用意します。クリスマスも近いので、ご自分用とあわせてプレゼント用のノートを作るのもいいかもしれません。贈る人のことを思いながら、紙を選ぶのも楽しい時間です。ぜひ、ご参加ください!
 
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