2017年12月25日

ヘビーデューティーの道具

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古本屋でなにげなく手にした小林泰彦氏の『ヘビーデューティーの本』を読んでみたらこれが面白い。この本は1977年に出版された本の復刻版で、1960年代末ごろにアメリカで生まれた「セルフエイド」や「アースムーブメント」という考え方とともに広まっていったアウトドアのファッションや道具を詳細なうんちくとともに紹介している。
 
ヘビーデューティーは、丈夫で頑丈といった意味だけど、60、70年代にL.L.ビーンをはじめとするアウトドアメーカーによって、アメリカの猟師や漁師、きこり、開拓者などが使っていた道具や服などをもとに、ナイロンやアルミなどの新素材を組み合わせたり、新しいアイデアやライフスタイルから多くのアウトドアの道具が生まれた。
 
この本では厳しいアウトドアでもきちんと機能し、酷使に耐える道具や服のことをヘビーデューティーと定義している。そして、そういった服や道具を日常の生活に取り入れることを提唱している。僕自身は少年時代にその洗礼を受けるには少し遅すぎたけど、それでもポパイやホットドックプレスなどの雑誌を読んで、デイパックやマウンテンパーカーなどが紹介されているのを憧れとともに読んだのは覚えている。この本を読んでいると、あの頃のわくわくした感覚がふつふつと蘇ってくるのと同時に、それらの道具の背景や奥行きをあらためて知ることができた。
 
例えば、量産のバックパックは、アメリカ先住民が使っていたものをまねて、木のフレームにキャンバスを張ったものが始まりでさらにそれがアルミとナイロンに変わり、腰にベルトをつけたことで、飛躍的に使いやすくなったとある。
 
また、バックパックは、何日か補給なしで自給自足で自然のなかで自力で生きていくために、必要最低限の道具や食料をいれておくためのものでなければならないという考えとあわせて、重いものを上部に入れて軽いものを下に詰めるなどの使い方を解説している。少年時代だったら、行くあてもないアラスカの荒野に思いを馳せながらそれらの道具に深い憧れを抱いただろうし、今の自分だって、これらの道具とどこかに旅に出る姿を想像してしまう。
 
つまりヘビーデューティーの道具とは、使用する目的やシーンに対して必要かつ充分な機能と耐久性があり、その形や機能には必然性と意味がある本物であるといこと。長く使えて、本物が故の物語があるからこそ美しいくて愛着を持って使えるし、使い手に想像力や高揚感を与えてくれる。例えばヴィクトリノックスのナイフを手にすることで、日常で鉛筆を削ったり、封筒を開封するのに使ったりしながら、同時にアウトドアでの使用にも耐えうるサバイバルの道具であることで、いつかその道具とともにする旅を想像しワクワクする。
 
今年もあと少し。2017年もたくさんのプロダクトをリリースしてきたけど、僕らも作る道具もまたそうありたいと思っている。ブラスプロダクトのラインアップに新たに加わった万年筆に、オリーブエディションをはじめ、ミスターソフティーにハウスインダストリーズ、ACE HOTELなど様々なコラボレーションに、トラベラーズファクトリーのオリジナルプロダクトも想いは同じで、毎日手にして使うことで新たな旅や新しい生活を想像してほしいと考えて作っている。
 
皆様にとって2017年はどんな旅だったでしょうか。僕らは相変わらずあまりゆっくり立ち止まることもないバタバタとした旅でしたが、皆様のおかげで楽しく充実した旅になりました。皆様にとってもまもなく終わりを迎える2017の旅が楽しくわくわくするもののであったことを願います。そして、2018年もトラベラーズノートとともによい旅を!
 
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