2018年3月12日

ノートをもっともっと楽しくしたい

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そうか。あれから7年なんだ。先週のブログで、トラベラーズノートがこの3月で12周年になると書いたけど、あの震災があったのはちょうど5周年記念のトラベラーズノートを発売する直前のことだった。

2011年、トラベラーズノート5周年を記念して、はじめて新色のキャメルを限定版としてリリースすることを決めた。いよいよ出荷となるその直前に、あの震災がおきた。東京も一時的に工場や物流の機能が止まってしまい、発売を2週間延期することになった。

毎年3月に新しいプロダクトをリリースしているけどいつもその時期が近くなるとちょっとした緊張感に襲われるのは、新しいプロダクトが皆さんにどのように受け入れられるかということだけでなく、あの震災の記憶があるからなのかもしれない。あの時は再発売を決めるにあたっても、日本が危機的状況にあり自粛ムードに包まれた中、5周年を記念したトラベラーズノートを出しても良いのか悩んだし、そもそものそんな時のノートの存在意義ってなんだろうと、深く考えさせられた。結局考えた末に出た結論は、トラベラーズノートを手にすることで、毎日の暮らしをより豊かで楽しいものにして欲しいという、僕らの活動の原点を再確認することでしかなかった。

あの年は、初めての海外イベントをソウルと香港で行い、さらに京都でイベントを行いながら、10月にトラベラーズファクトリーをオープンした。けっこう忙しい年だったけど、その源にあったのはやっぱり震災時にあらためて考えさせられたトラベラーズノートの原点だったし、そのために僕らは活動を自粛するよりも、ギアを一段上げていくことを選んだ。

7年という月日は、東北にとっては長いようで、あっという間で、まだ解決できていない問題もたくさんある。僕らは復興に向けた特別なことは何もできていないし、偉そうなことを言えないけど考えはあの時と同じで、僕らの作るノートがその日常にあり、それぞれの暮らしを少しでも豊かで楽しいものにしていれば嬉しいです。
 
さて、スパイラルリングノートの仲間に新たに水彩紙とカードファイル、フォトファイルが加わる。まだ発売前に、いち早く製品サンプルを手にすることができるのは、作り手の特権。使用テストのためということにして、工場から届いたばかりの焼きたてのパンのような新鮮なノートを手にして、どんな風に使ってみようかと考えるのは自分たちにとっても楽しいことだ。

まずは、1月にスペインのバルセロナで見て感動したサグラダ・ファミリアを描いてみた。直線を排したグニャグニャした不思議な形の建物だけど、絵を描こうとすると、そこに規則性を見つけることができる。でも描いていると、あっさりその規則性を破る不規則さもあったりしていろいろな発見があるのが楽しい。そうやってなんとか描きあげた絵は、水彩紙の良さを活かしたとは言えないけど、まあこれはこれで良しとする。

いつも使っているトラベラーズノートのリフィル画用紙と比べると、水が染み込んでいくのに少し時間がかかる。僕にはそんなテクニックはないけれど、水彩らしく色をにじませたり、他の色をたらしてグラデーションなどを描いたりもできそうだ。絵具が染み込みにくいから、シミのようなムラにもなりにくいし、絵具の裏抜けも少ない。紙の良さを十分活かして描くような技術が僕にはないけど、いろいろ試してみたいし、もっと自由に頭に浮かんだイメージを描いてみたいな。
 
カードファイルは、名刺ファイルにもぴったり。72枚の名刺が入る。職種にもよるけど、多くの人は仕事をしていると、名刺はどんどん増えていくと思う。きっと2度と会わないであろう人に、いつもやり取りしているから名刺まで、何年かに一度は整理しようとするのだけれど、結局、大量の名刺に埋もれて諦めてしまって、ごっそり無秩序に箱に入れておしまいとなる。だけど今はメールや携帯でやり取りをしているから、それでそれほど困ったりもしない。そんな時、ふと頭に浮かんだアイデアに心がときめいた。
 
そうだ、これからも一緒に仕事をしていきたいと思っている人たちだけの名刺を入れたファイルにしよう。偉いとか、取引金額が多いとか、会社との関係性とかそんなことは一切考えず、僕らがこれからも一緒に何かをしていきたい好きな人達だけの名刺が詰まったファイルにしよう。用がなくても眺めているだけでワクワクする名刺ファイルになりそうだ。
 
やっぱり僕らにとって、ノートは何よりも毎日を豊かで楽しくするものでありたいと思う。これからも、それを大切にしてノートに向かい合っていきたし、必要であればさらにギアを上げていく。

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