2018年10月 1日

チェンマイからバンコクへ

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今回のタイ出張は、最初にチェンマイに2泊して、続いてバンコクに2泊の計4泊の忙しい旅だった。さらにバンコクは夜10時に入り、帰りも朝の10時にはホテルを出なくてはいけないので、実際に動けるのはたった1日しかない。
 
まずは、バンコクから車で1時間ほど走った海沿いの場所にある、トラベラーズノートの革をなめす工場へと向かった。革をなめすのは、なかなか大変な仕事だ。原皮と呼ばれる塩漬けになった牛の革を巨大なタルの中に入れて、きれいな状態にすることからはじまり、なめし剤に入れたり、乾かしたり、色を染め、オイルやワックスをローラーとともに圧力を染み込ませ、やっと革ができあがる。
 
出来上がった革を広げると、革そのものが持っている傷やシミが所々にあり、さらに部位によって質感も異なるのがよくわかる。できる限りこの傷やシミを避けながら、トラベラーズノートの革カバーを作っていく。だけど、細かい傷やシミを含めると、ほとんどの場所にあるのでこれを完全に避けるのは難しい。その基準も天然素材である以上、数値化して白と黒ではっきり区分けすることはできず、その狭間のグレーをそれぞれの感覚で判断せざるを得ない。同席していたチェンマイの工房のオーナーと僕らにとってはこれは悩ましい問題でもある。
 
革工場の提案として、表面にさらにスプレーで色付けした革のサンプルを作ってくれた。一見してもその違いはそれほど分からないけど、よく見ると革の表面がどこも変わらず均一で、トラベラーズらしいナチュラルの味わいがあまり感じられない。さらに致命的なのが、トラベラーズノートの大きな魅力でもある、経年変化が起こりにくいということもある。僕らはそのサンプルを見ながら、「No」と言うと、革工場のスタッフも、やっぱりそうだよね…という感じで苦笑いをした。
 
トラベラーズノートの革を作る革工場、革カバーの形に加工するチェンマイの工房、検品をしながらリフィルをセットする流山工場。その3社の間では、常に革の傷や風合いについての基準について、時に悩み、時には厳しいことを言いながら、ものづくりを進めている。トラベラーズノートを12年以上作り続ける中で、ずっと抱え続けている問題でもある。

だけど、これは避けられない問題として、ずっと付き合っていかなければならないことだと、最近は思うようにしている。例えば、革工場が提案したように、スプレーで化粧をしてしまえば、もっと簡単に効率的に革カバーを作ることができる。だけど、そうするとトラベラーズノートにとって大切な何かが失われてしまう。シミや傷を隠すのではなく、そのモノが持つ愛すべき味わいと考える。均一であることよりも、個体差があることを魅力と考える。そして、年を経て古くなることを、味わい深く愛着が増していくとポジティブに捉える。だからこそ、トラベラーズノートには、温かさや優しさ、寛大さや懐の深さみたいな味わいがあるのだと思う。
 
革工場では、すべての問題が解決できたわけではないけれど、革の風合い、色合いなどの調整をしテストサンプルを作りながら、トラベラーズノートの革があるべき方向性を再度共有した。革工場からバンコク市内に戻るともう夕方。最後に今回の出張で訪れたかったもうひとつの場所へ足早に向かった。

LAMUNEは、バンコクの中心地サイアム駅近くにある小さいけれど、トラベラーズノートを深い愛情とともに扱ってくれているお店だ。僕らが行きたいと連絡したら、この日は定休日だったにも関わらず、お店を開けて待っていてくれた。早速、店頭にあるスタッフみんなで書いたというトラベラーズノートのサンプルを開くと、素敵な水彩画でトラベラーズファクトリーのイラストが描かれている。それを見るだけでもスタッフみんながトラベラーズノートを好きで愛情を持ってお客様に紹介しているのが分かる。その横には、ファランポン駅に、バスチケット、サイアム駅の看板など、タイのモチーフをデザインしたオリジナルのスタンプがたくさん用意されている。

思わず嬉しくなって、自分のトラべラーズノートにこれらのスタンプを押した。みなさまもバンコクへ行ったら、ぜひ立ち寄って
みてください。その後、Lamuneのオーナー、ワリットさんの案内で、チャイナタウンにある屋台のお店で、チキン焼きそばをいただく。さらに、古いビルをリノベーションした素敵なバーでクラフトビールを飲みながら、タイ最後の夜を楽しんだ。
 
今、ちょうど日付が変わったところだけど、東京でもだいぶ風と雨が激しくなっています。今年、何度目かの大型台風、大きな被害がないことを願います。
 
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