2019年2月18日

地図を描く

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昔、仙台で営業の仕事をしていた頃、地図を描くのがとても上手な上司がいた。例えば、「秋田の〇書店さんの場所って分かります?」と聞くと、手元のコピー用紙をひっくり返し、やおらまっすぐ線を引き、「高速を降りて、国道13号線を市内に向かって走って県庁を超えたこの辺りにセブンイレブンがあるから、それを右に曲がって、しばらく細い道を走ると、左側に古い酒屋さんがあるんだよ。それを過ぎて2つ目の信号を左折すると、すぐに見えるよ」と言いながらすらすらと地図を描いていく。そして最後に印をつけて、その横に独特のくせのある字で〇書店と書くと、さっと手渡してくれた。

実際この上司の描く地図はとても分かりやすくだいたい迷うことなくその場所にたどり着くことができた。しかも、もう4、5年も行っていないという場所でもささっと正確な地図を描くことができる。これはもう才能と言ってもいいくらいなんだけど、残念ながら地図を描くのは、英語やパソコンみたいに分かりやすく必要とされる技術でもないし字や絵が上手なことに比べるとそれほど目立たない。

高いレベルにあるにもかかわらずその才能は、同僚の得意先周りくらいにしか活かされなかった(それすら今はグーグルマップがあるから必要とされないのかもしれないけど...)。将棋や囲碁みたいに地図を描く競技があればプロとまではいかなくてもアマチュア大会で上位を狙えたレベルだったはずだ。

ちなみに僕は地図を描くのがあまり得意ではない。いざ描いてみようとすると、距離感が適当だし、目印にしてもセブンイレブンだったか、ローソン記憶があいまいで、だからコンビニとだけ書くとその辺りにはローソンもセブンイレブンもあって、どっちを曲がるのか分からない、なんてこともある。 

地図が得意な人は、方向感覚と記憶力に優れて、A地点からB地点まで行くのに最短距離で迷うことなく行ける人が多い。そんな人と一緒に車に乗っていたりすると、すぐに大通りをショートカットして、細い道をクネクネと曲がり近道を探して進んでいく。で、その後ひとりで運転している時に僕も同じ道を走ろうとすると、たいていどこかで曲がり角を見逃して道に迷い、近道どころか余計に時間がかかってしまう。だけど、たまに偶然おもしろいお店を見つけることもあるし、迷った末に知ってる場所に出た時には感動するし、迷うことでいいこともある。今ではカーナビとかグーグルマップとかあるから、道に迷うことも少なくなったけど、方向音痴ならではの楽しみも少なくなってそれはそれでどこか寂しかったりもする。

そんなわけで、僕は地図を描くのは得意ではないし、道に迷いがちなタイプの人間ではあるのだけど、地図を眺めるのは昔から好きだった。中学校の時に使っていた世界地図帳は、暇な時はいつも眺めていたからボロボロだったし、いつかそのルートを旅しようと妄想しながらマーカーで引いた線がたくさんあった。どこかの街を訪れて、観光マップとかロードマップの類いが置いてあると、つい手にとってしまう。地図を眺めながら、ここはどんな場所なんだろうと想像したり、逆に帰ってきてその場所を思い返したりするのも楽しい。

そういえば、中学生の頃は、架空の街を妄想して、その街の地図を描いたりしていたけれど、あれはとても楽しかったな。架空の街だから、方向感覚と記憶力は必要ないし。地図自体は好きだから、下手の横好きで地図を作るのはけっこう好きなのだ。トラベラーズノートの月間ダイアリーに印刷されている地図に記載する都市を選ぶのはとても楽しい作業だったし、トラベラーズファクトリーの中目黒マップも楽しく作らせてもらった。

今ではグーグルマップがあるから、紙の地図を見なくてもその場所に辿り着くことができるけど地図を開いて、いろいろ妄想するのはやっぱり楽しい。次はどんな地図を作ろうかな。

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