2019年2月25日

ひとりとチーム

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KO'DA STYLEのこうださんとの出会いは、トラベラーズファクトリーができる前だったから、たぶん10年近く前のことになる。イベント会場に足を運ぶと、ずらりと並んでいるシンプルなのに温かさとユーモアを感じさせて、まさにこうだスタイルとした言いようがないバッグにまずは惹きつけられた。さらに、それらをすべて自分でデザインをし、ひとりでひとつずつミシンで縫って作り上げ、自分で自らお客さんに説明をしながら注文を取り出荷もする、その仕事のやり方にも興味を抱いた。

トラベラーズノートを作るためには、チェンマイの工房や流山工場などで働くたくさんの人たちの協力を必要とする。さらにできあがったトラベラーズノートがお客さんの手に渡るまでには営業スタッフがいて、その先には問屋さんや小売店さんの協力があり、他にも在庫を管理したり、出荷したり、お金の回収や支払いを管理したりするための人などたくさんのたちが関わり、協力してくれている。それらを効率的につつがなくこなしていくために会社組織が作られている。

ずっとそのシステムの中でものづくりを続けてきた僕らは、トラベラーズノートを作って以来、その世界をさらに深めようとしていくにつれて、システムの一部にちょっとした窮屈さを感じ始めていた。そんな中で、すべてのリスクを自分で背負いながら、身一つで、自らの信念のもとに自由にものづくりをしているこうださんの姿はとても眩しかった。

もちろん会社組織を否定するわけではなし、チームの一体感が生み出すグルーブとか、さまざまな得意分野を持つ仲間とのハーモニーは、僕らが大切にしていることでもある。だけど、会社である以上全体最適を考えないといけないし、そのためのルールとか業界の慣習が足かせのように感じることもあった。

その後、トラベラーズファクトリーを作り、そこでオリジナル商品を販売したり、イベントを開催したりするようになったのは、少しずつその足かせを外していく行為でもあった。だから、トラベラーズファクトリーでこうださんとはじめてイベントを開催できた時は嬉しかったし、その後も毎年イベントを開催していただいている。

こうださんのバッグは、安価なものではないかもしれないけど、作家性とか作品としての付加価値が付けられた高級品ではなく、普段使いできる日常の道具だ。むしろ、きちんと作られたバッグとしては買いやすい価格とも言える。基本的にはオーダーを受けてから一人で作るので、手に届くまで時間がかかるのだけれど、その分生地の色やハンドルの長さを自分の好みに変えてオーダーすることができる。

それにオーダーしてから時間が経って手に届くのは、実際に経験してみると思っていた以上に嬉しい体験だったりもする。こうださんが葉山の工房で縫っている姿を想像しながら待つのも楽しいし、手に届いた時は感謝の気持ちとともにこうださんの顔が目に浮かんでくる。きっとこうださんも、そのお客さんのことを想像しながら作っているはずで、そんな作り手と使い手の心の交流があるものづくりは今ではとても贅沢なことだと思う。
 
トラベラーズノートは、ある程度の量の数を作り販売するための仕組みの中で流通している。だけど売上や効率性だけを追求するのではない、人の温かさが感じられるプロダクトでありたいと考えている。こうださんのバッグのように使う人のことを想像しながら作り、作り手のことを想像しながら使ってもらうようなモノでありたいし、トラベラーズファクトリーもイベントもSNSもこのブログだってそのためにあるのかもしれない。
 
週末からトラベラーズファクトリーでは、KO'DA STYLEさんとshort fingerさんのイベント、choice展を開催している。short finger の渡部まみさんもこうださんと同じように、自分でオーダーを受けて葉山で自らニット帽を作っている。イベントではちょっとでも手が空くと常に編み棒を動かしながらニット帽を編んでいて、話ながらでも正確にすばやく動く手さばきは、まさにプロフェッショナルな職人技だ。

こうださんと渡部さんは、忙しい時間を割いて今回のイベントのために特別にトロールバイキングとタッセルバイキングという、手間のかかる企画を用意してくれた。これって、売上や効率性だけを考えて仕事をしていたら絶対にできない企画だし、皆さん楽しそうに生地やタッセルを選ぶ姿を見て、僕らもお二人に感謝するとともに嬉しい気持ちになった。

こうださん、渡部さん、いろいろ大変だとは思いますが、ぜひまたやってくださいね!
 
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