2019年3月11日

グリーンブックと運び屋

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土曜日のこと。いつもだったら用がなければ10時ごろまで寝ているのだけれど、花粉症のせいで鼻水が止まらず早めに目が覚めてしまった。薬を飲んでしばらくボーッとしていると、せっかくだから映画を見に行こうと思い立った。見たい映画がふたつあってどちらにしようかと悩んだけれど、別に他に特別やることがあったわけでもないし、時間もたっぷりあったので両方見ることにした。

ひとつは先日アカデミー賞の作品賞を受賞した「グリーンブック」、もうひとつは久しぶりのクリント・イーストウッドの監督兼主演による映画「運び屋」、そのふたつをダブルヘッダーで見に行った。どちらも素晴らしい映画で満足したのだけれど、印象的だったのは、両方の映画にアメリカの広大な大地を車で走るシーンが多くあったことだった。

「グリーンブック」では、黒人の天才ピアニストと、その運転手兼用心棒として雇われたがさつなイタリア系の男がピカピカのキャデラックで、アメリカの南部をコンサートツアーをしながら旅をする。「運び屋」では、クリント・イーストウッド演じる頑固だけど愛嬌のある典型的なアメリカのじいさんといった感じの男が、コカインの運び屋としてメキシコ国境近くからデトロイトまでボロボロのフォードのピックアップトラックで走って旅をする(お金が手に入ったせいで途中でリンカーンの高級車に変わってしまったのは残念だったな)。

アメリカ南部の荒涼とした美しい風景の中を走りながら、1962年が舞台の「グリーンブック」では、流行りの歌として、現代劇の「運び屋」では年寄りが聴く懐メロとして、ラジオからはイカしたアメリカの古いポップソングが流れてくる。クリント・イーストウッドは、ラジオにあわせて声をあげて歌いながら、楽しそうにハンドルを握る。今も昔も長距離ドライブには音楽がつきものだ。余談だけど、長距離列車には本、飛行機の旅には映画がいい。

途中車を止めて、例えば「グリーンブック」では、ケンタッキーフライドチキンの1号店に立ち寄り、「今まで食べたケンタッキーフライドチキンの中で一番うまいよ」なんて言ったり、「運び屋」では、「ここはアメリカで一番のポークサンドが食える」と監視役として付いて来たメキシコ人のギャングと一緒にサンドウィッチをほうばる。どちらもその背景に人種差別があることを示唆するのだけれど、それはそれとして本当に美味しそうだ。ここに出てくるような飾らないローカルフードを食べさせてくれるお店に立ち寄りながら、アメリカを何日も車で旅したくなってくる。

見終わると、毎日のように車に乗って長距離を移動していた、昔の営業時代を思い出した。あの頃はクリント・イーストウッドと同じように、車を運転しながら、ひとりラジカセから流れる音楽にあわせて歌っていた。10万キロ以上走っていたライトエースの営業車にはAMラジオしか付いてなかったから、ラジカセを積んでいたのだ。

長距離トラックがたくさん止まっているようなお気に入りのドライブインでよく食べていたモツ煮込み定食とかカツ丼も、アメリカで言えばフライドチキンやポークサンドと似たようなものなのかもしれない。グリーンブックのように、雪の中をビクビクしながら運転したこともあったし、高速道路でパンクしてしまい、ひとりスペアタイヤに付け替えたこともあったな。その時はなんでこんな目にあうのだと泣きたくなったけど、それでも車の旅は嫌いではない。

車での旅は、電車や飛行機とも違った大変さもあるけど、他にない味わいや楽しさがある。そう言えばトラベラーズキャラバンイベントで金沢、奈良、徳島、広島を車で回ったのはもう5年も前のことだ。あれはあれで大変だったけど、楽しかった。そろそろまた国内を車でキャラバンしてみたいな。
 
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